【あんぱん】戦後をたくましく生きる女性たち。その中にひとりちんまりと座る嵩(北村匠海)のフィット具合が絶妙だ
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田幸和歌子
女性陣で埋め尽くされる宴席の光景は壮観だ
こうして中目黒の質素な長屋、天井に穴が開いていたりしてもそれを星空が眺められるとポジティブに笑うような微笑ましい仲の良さとともとにふたりの新婚生活は始まった。そんなところに、高知からのぶの祖母・くら(浅田美代子)、母の波多子(江口のりこ)、妹の蘭子(河合優実)とメイコ(原菜乃華)が東京ののぶのもとにやってくる。
「物置みたい」とくらが言えば、「東京やと思うたらオンボロでも素敵やー」とはしゃぐメイコ、それをいなす波多子と蘭子という絶妙なバランスは健在だ。
「結婚おめでとう!」
ご祝儀だというあんぱんをたずさえ、みんなで二人を祝福する。上京はそんなサプライズだった。朝田家の女性たち、そして釜次(吉田鋼太郎)、千尋(中沢元紀)、寛(竹野内豊)、次郎(中島歩)らこの世を去った男性陣たちの写真を並べたお祝い会のような宴がはじまる。
くらがここに本当は登美子も呼びたかったと言い、「あのひとが来るといろいろやっかいなので」と嵩が返したところに、
「あの人ってわたしのことかしら?」
と毛皮をまとって〝オンボロ〟長屋に突如現れる登美子。先ほどの上京まもないころといい、登場の仕方はどこか新喜劇のようでもある唐突な乱入ぶりだ。しかし、その隣には嵩の伯母である千代子(戸田菜穂)の姿があったことにほっとする。
それにしても、女性陣で埋め尽くされる宴席の光景はなかなか壮観である。戦後をそれぞれたくましく生きる女性たち、そしてその中にひとりだけちんまりと座る嵩のフィット具合がまた絶妙だ。映像的にもこのドラマの印象的なシーンのひとつに確実になるような気がする。
そんな賑やかな宴席をこっそり抜け出したふたりは、天井の穴から星空を見上げ、
「幸せって、誰かにしてもらうもんやなくて、2人でなるもんやないろうか」
そうのぶがいい、二人は静かにキスをする。それぞれの速度でそれぞれの道を歩いてきた幼馴染の二人がとうとう思いを通わせた。このシーンは一発撮りだったことが発表されているうえ、これまでの共演回数も多いはずの二人なのに耳を赤くするような初々しさを醸し出すキスシーンは、なんともロマンチックな純愛の結晶を感じるようなものだった。
この先、嵩の本格的に漫画を描く夢は叶えられるのか、叶えさせてあげられるのか。二人の新生活が、本格的に始まる。
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