認知症の先にある「介護」問題。知らないとまずい「段階」とは?【『認知症になる人ならない人』の山田悠史先生が解説】
介護の準備って大変そう……と身構えていませんか。やみくもに不安になることはありません。米国老年医学専門医の山田悠史さんが、最先端の科学に基づいて解説します。話題の新刊『認知症になる人 ならない人 全米トップ病院の医師が教える真実』から、一部抜粋してご紹介しましょう。前編は、本当に必要な介護準備について。
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段階を追って、無理なく少しずつ
認知症の患者さんは、自立して日常生活を送ることができません。つまり、誰かのサポートを必要としているということです。そのサポートを受ける場所として、大まかに分ければ、自宅か施設かという選択になりますが、ここではまず自宅での介護を想定してみたいと思います。
認知症の家族を自宅で介護すると決めた場合、気になるのが「どんな商品やサービス、環境調整が必要になるのか」という点ではないでしょうか。想像すると、色々なものが必要そうで頭がパンクしてしまいそうになるかもしれません。
実際、一言で認知症と言っても、症状の進み方や家庭環境によって必要なサポートは大きく変わります。しかし、ポイントを知っておけば、そこまで複雑に考えなくて良いと感じられるでしょう。
認知症の段階をまず把握しよう
ここではまず、在宅介護を選択するときに押さえておきたい視点として、IADL(Instrumental Activities of Daily Living/手段的日常生活動作)からBADL(Basic Activities of Daily Living/基本的日常生活動作)へとサポートが広がっていく流れを捉えておきましょう。
IADLとは、生活を円滑に営むうえで必要とされる比較的高度で複雑な動作のことです。例えば、「買い物、料理、洗濯、金銭管理、電話のやりとり、交通機関の利用、服薬管理」などが該当します。
一方、BADLは、より基本的な日常生活動作のことで、「食事・排泄・着替え・入浴・移動・整容」などの身のまわりの動作が該当します。
子どもの成長と逆の流れを想定していただければいいかもしれません。子どもは、まずは簡単な動作、つまり食事や着替えといった基本的な動作が少しずつできるようになります。やがて成長すると、一人でおつかいに出かけたり、料理の手伝いをしたり、お金の管理をしたりすることができるようになるでしょう。初めはサポートが必要でも、やがてはこれらも一人でできるようになります。
認知症はこの逆のプロセスをたどっていきます。すなわち、お金の管理や料理といった、より高度な動作(IADL)からサポートが必要になり、やがて食事や着替えといった基本的な動作(BADL)にもサポートが必要になります。
少し見方を変えると、子育てでは小さな頃こそ多くのサポートが必要で、だんだんと親の手を離れていきますが、介護では少しずつ必要なサポートが多くなります。捉えようによっては、いきなり身構える必要はなく、少しずつ段階を追って準備ができるとも言えるかもしれません。
