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「”国宝トーク”をしている間だけは現実を忘れられる…」アラフィフ女子が映画『国宝』に熱狂する本当の理由

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藤岡眞澄

『国宝』は糖尿病の教材だ——と同級生の医師

さらに、『国宝』が提示するのが、“血”は「身を滅ぼす」こともあるという二面性。糖尿病で命を落とした半二郎と同じく、俊介も糖尿病が原因の足の壊死で、役者人生に終止符を打つ。俊介が最後に演じた『曽根崎心中』のお初。喜久雄演じる徳兵衛を倒けつ転びつしながら追いすがるお初を演じた横浜流星。その気迫に息を飲む。

この場面を観た糖尿病専門医の同級生は、「『国宝』は糖尿病の教材になる」とブログで警鐘を鳴らした。なるほど、他人ごとではすまされない年齢になった、ということだ。

自分の身体に脈々と流れる“血”、そして送ってきた人生についても、ザワザワと考えさせてくれるのが『国宝』の魔力だ。

「”国宝トーク”をしている間だけは現実を忘れられる…」アラフィフ女子が映画『国宝』に熱狂する本当の理由(画像5)

映画館のポスターも人気!筆者も撮影を…

実は、喜久雄が半二郎にその才能を見出され……という物語の始まりは1964年、昭和30年代だ。『国宝』では喜久雄が人間国宝に認定されるまでの半世紀を描いている。スクリーンの中の喜久雄は、私たちが生きてきた同じ時代をシンクロして生きている。

だからこそ、セットや小道具、ファッション、食事メニューに至るまで、あの時代の日常を写しとったようなディテールの完成度の高さは、鑑賞回数を重ねるたびに新しい発見をもたらしてくれる。時間の流れがきちんとデザインされているから、なつかしさが胸にこみ上げる。

そのせいなのか、公開当初は女性が目立っていた観客席に、熟年男女ペアの割合が増えてきた。演技はもちろん、監督、脚本、撮影、美術、音楽… 時代の息吹を感じながら、これほどいろいろな視点で尽きることなく語り合える映画は他にないからだ、と思う。

『国宝』を観ない人生より、観た人生のほうがきっと味わい深い。そんな『国宝』ファンの間では、映画館で観た回数を「宝」としてカウントするそうだ。1回観たら「1宝」。だとしたら、いまの私は「4宝」。ちなみに「10宝」などざらにいる、らしい。

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