記事ランキング マンガ 連載・特集

【佐々木蔵之介さん】ルーマニアで一人芝居「電子レンジを購入するところからはじまりました」57歳での挑戦で学んだこと

公開日

更新日

恩田貴子

物語を読み解くヒントは幼い頃に読んだ『ピノキオ』

『ヨナ』は、旧約聖書に書かれた聖人ヨナの逸話を題材にした、哲学的な戯曲。ルーマニアの文化や生活に深く根差した物語でもある。

「僕には、それらに対する深い知識がありません。だから、“一人の漁師の物語”として読み解いていくことにしました。大きな魚にのみ込まれ、脱出を試みる漁師の物語。骨格は、子どもの頃に読んだ『ピノキオ』にも似ています。そこから、子どもがセリフを聞いて、空想がふくらむ物語にできないかなと思ったんです。プルカレーテさんにそう伝えたら、『それでいいんだよ』と」

プルカレーテ氏からは、「これは自由を求める人間の話だ」と言われたという。

「ルーマニアで彼らと暮らす中で、共産主義時代のことを聞く機会があったんです。この物語の根底にある“自由への思い”を肌で感じながら、作品をつくっていきましたね」

シビウでの約1カ月にわたる生活は、電子レンジを購入することから始まった。慣れない土地での生活は、不便も多かったことだろう。しかし佐々木さんは、「気にしないのが一番!」と軽やかに乗り越えていく。

「海外に行くと、自分が当たり前だと思っていたことが、そうじゃないことに気づくんですよね。レストランでメニューを見て頼んだら、想像と全然違うものが出てきたり。凝り固まった考えのままでいても仕方がない。どんな状況もすべて受け入れてこそ楽しめる、と僕は思っているんです。今回も毎日いろんなことがありましたけど、そのたびに『よし、話のネタができたぞ!』と思って、楽しんでいましたね」

その屈託のない笑顔は、年齢を重ねることで変化に臆病になりがちな心を、ふっと軽くしてくれる。

「もし自分には乗り越えられそうにない困難に直面したとしても、一人で立ち向かわなくていいと思うんです。周りの人に頼って、助けてもらえばいい。今回の挑戦も、両国のスタッフをはじめ、本当にたくさんの人に助けてもらいました。若い頃は、自分で何とかしなきゃって思っていたけれど、人は絶対に一人では生きられないんです。頼り、頼られ、お互いさまなんじゃないかな」

諦める代わりに自分ができることを探せばいい

25年前も今も、佐々木さんは常に新しい扉を開け続けている。では、これからの25年は、どんな挑戦が待っているのだろうか。

「まずこれから25年、生きていられるかどうかですよ(笑)。できたらあんまりしんどい挑戦はしたくないな、というのが本音です(笑)。でも今回の『ヨナ』のように楽しいと思える挑戦は、続けていきたいですね。年を重ねるとできないことが増えていくけれど、そんなときは早めに諦める。僕ね、最近諦める力がついてきたんです(笑)。諦める代わりに、自分ができることを見つければいい。これからも無理せず、楽しみながら挑戦していけたらと思っています」

【Information】佐々木蔵之介ひとり芝居 『ヨナ-Jonah』

預言者のヨナは、ある日、大きな魚にのみ込まれてしまう。その腹の中で自問自答を繰り返していると、彼をのみ込んだ魚がさらに大きな魚にのみ込まれてしまう。3日3晩たって、やっと外に出られたヨナだが、彼がそこに見たのは……。

原作/マリン・ソレスク 
翻訳・修辞/ドリアン助川 
演出/シルヴィウ・プルカレーテ 
出演/佐々木蔵之介 
製作/東京芸術劇場、ルーマニア・ラドゥ・スタンカ国立劇場
日程/10月1〜13日東京芸術劇場 シアターウエスト
料金/9500円(一般) 
他に10月18日金沢、25・26日松本、11月1・2日水戸、8・9日山口、22〜24日大阪 
●https://www.geigeki.jp/performance/theater377/

▼あわせて読みたい▼

>>ドラマ初主役を務める【風吹ジュンさん・73歳】初共演の夏木マリさんに対する思いも告白 >>「社長、安ぅ〜い!」あの通販CMで注目の【夢グループ・石田社長】意外すぎる成功の要因とは? 現在の橋幸夫さんとの向き合い方は? >>60歳を迎えた【高島礼子さん】「キャスティングしていただけるのなら何でもやろうと思いました」人生を輝かせる方法とは?

撮影/広岡雅樹 
ヘア&メイク/晋一朗(IKEDAYA TOKYO) 
スタイリング/勝見宜人(Koa Hole inc.)

※この記事は「ゆうゆう」2025年10月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。

画面トップへ移動