【ばけばけ】「それでも困ったら、私がいます」優しく語りかける錦織(吉沢亮)に、異文化交流の予感[写真多数]
公開日
更新日
田幸和歌子
ヘブンの視点では、
「SAMURAI……」
と、なかば興奮ぎみに感動するが、一方の勘右衛門はといえば、
「ペリー! 覚悟ぉ!!」
木刀で殴りかかろうとする。ほぼコントのようでもあるが、この軽妙さが本作の今のところでの一番の魅力であると思われる絶妙な空気感だ。司之助は勘右衛門とはまた違い、持ち前のコミュ力を発揮、ヘブンに牛乳を飲ませ、いっぽうで目玉焼きを作ってもらい盛り上がるなど、一気に打ち解けていく姿も明るい空気に一役買っている。一地方に現れた外国人が与える影響はこうだったのかなと、思わず感じてしまう描かれ方だ。
今も生きるサムライの存在をはじめ、ヘブンは降り立った松江に好奇心が掻き立てられるようで、気の赴くままに散策、予備知識もさほどなく、差別的な感情もおそらく違うのだろう、松江の人々にとっては下層地域のような扱いの「川の向こう」、そこにある遊郭にも三味線の音に誘われるかのように吸い寄せられていく。足を踏み入れられない潔癖性をもつ錦織との対照的な描かれ方もまたコミカルな雰囲気づくりに一役かっている。
トキたちにとって、代わり映えしない日常であり、希望もなかなか見いだせない単なる「日常」でしかない松江の風景にひとつひとつ感動し、「神々の国の首都」とまで口にするヘブンの姿には、トキでなくとも視聴者も引き込まれていくのではないだろうか。予定していた旅館でなく、庶民的な花田旅館を滞在先として変更するところも、その人物像が短い間に凝縮されているようだ。
ヘブンへの好感が高まっていく展開だ
しかしそんなヘブンも、実際には初めて降り立つ異国の地に不安や畏れは抱いていたようで、トキが握手をした手が震えていたように感じたこと、日本人の身長に合わせ背をかがめていたこと、そして錦織が見た、ヘブンが日本語の書き取りをしていた痕跡……
「日本語はいりません……あなたが話す言葉を、いや、あなた自身を、みんなは待っています。それでも困ったら、私がいます」
そんなヘブンに優しく語りかける錦織。そう言ってもらえたことで、すかさず、
「アイム、ハングリー」
と言い出すヘブン。
見る側のヘブンへの好感が高まっていく展開だ。少しずつ近づいていくヘブンと松江の面々。異文化はこの先どう互いに受け入れられていくのか。そして、トキとヘブンはどのように交流していき、伝承される怪談に出会っていくのか。期待感はますますふくらむ。
▼あわせて読みたい▼
>>【ばけばけ】婿の銀二郎(寛一郎)が抱えている思いに、トキ(髙石あかり)は気づけていなさそうだ >>【ばけばけ】蛇と蛙の阿佐ヶ谷姉妹の掛け合いにクスッ。この脱力感こそ令和の朝ドラか >>【ばけばけ】朝ドラ恒例のダメ父、かわいいウサギがシュールな展開…悲惨なのに笑える斬新な演出がいい