歩きたいけれど寒い!そんな日こそ“家でちょこっと足トレ”【足連載/第3歩】
体をケアしながら歩けるボディを作る、「ケア・ウォーキング」という考え方
歩きの指導のプロである黒田さんが代表理事を務める「ケア・ウォーキング普及会」とはどんな団体なのか伺いました。
「以前、私が内科で運動療法に携わっていた頃、生活習慣病の方などに『歩いた方がいいですよ』と勧めても『関節が痛くて歩けない』とおっしゃる方が多くいらっしゃいました。体が弱ると動けなくなり、内科的な病気の予防も改善もできない。そのことを今から30年ほど前に痛感しました」
「運動指導はとにかく動かせ、とにかく歩けとなりがちですが、筋トレやストレッチが必要な本当の理由は“歩けるボディを作る”ためです。有酸素運動である“歩き”、そして“筋トレ”“ストレッチ”。この3つの要素をすべて伝えなければ意味がないという考えに至りました。体を痛めないようにケアしながら歩く。その意味を込めて『ケア・ウォーキング』と名付け活動を始めましたが、会員は募りません。時代と共に変化し、ゆるやかに広がる“普及”の形をとっています」
「『人生の最後の日まで自分の足で歩く』。これがケア・ウォーキングの理念です。“歩く”とは自立の象徴。たとえ車椅子を使うようになっても、自分で動けるように。人生の最後の日に、自分でトイレに行って戻ってきて、そこで、さようならを言える。それが、人の自尊心を最後まで保つことにつながるのだと信じています」
腕の振りで歩きが変わる! 体を痛めない歩行のコツ
では、「良い歩き方」とは具体的にどうすればいいのでしょうか。
「ポイントは、『体を痛めないこと』と『運動効果が上がること』の2つ。まず、腕の振り方。腕は、体に対して平行に、やや後ろに振ることを意識します。手を前に振り上げると重心が後ろに残り、腰に負担がかかります。後ろに振ることで、自然と体が前へ進み、歩幅が広がって歩くスピードが上がります」
「荷物を持っている時は、信号待ちのたびに荷物を持ち替えるなどして、体の歪みを防ぐことも大切です。そして、顔を上げることが重要。姿勢も“胸を張る”のではなく、足元から整えます。無理に胸を張ると、かえって反り腰や猫背を悪化させることがあります。姿勢は、肩からではなく下から直すのが基本。まず骨盤の位置を正しくし、胸を張らずに顔を上げる。すると自然とお腹に力が入る。それが良い姿勢です」
努力は挫折とセット。だから“お得感”のある簡単な体操を
「私は生徒さんに、努力はしないでくださいとお伝えしています。努力には挫折がつきもの。失敗体験は自己評価を下げてしまいます。それより、小さな成功体験を積み重ねてほしいのです。そのために、ごく簡単な体操をお勧めしています」
「たとえば、朝起きた時に足の指を1本ずつ持って前後に動かしていき、足首を10回ずつ回す。たったこれだけでも、立ち上がった時の安定感が全く違います。『足指を触っただけで辛かった階段が楽に降りられるようになった!』と喜ばれる方もいらっしゃいます。期待以上の効果、つまり“お得感”があると、人は自然とそれを続けられます」
「ほかにも、椅子に座って膝を開いたり閉じたりする股関節の体操や、軽く膝を曲げ伸ばしする『ゆるゆる屈伸』など、テレビを見ながら1〜3分でできる動きで十分。大切なのは、これでもかというほどハードルを下げて、0やマイナスだった状態から、ほんの少しのプラスを続けることです」
