糖尿病になってやめたものは「たった2つだけ」鳥羽シェフが病気を公表した理由、現在のリアルな生活も告白【鳥羽周作さんのターニングポイント#2】
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ゆうゆうtime編集部
前回は、糖尿病の発覚から現在の治療までについて鳥羽周作さんにうかがいました。第2回となる今回は、「なぜ病気を公表するのか」を深堀りしていきます。生活習慣病としての偏見、料理人としての葛藤、そしてそれをビジネスの可能性にまで変えてしまう思考回路——そこには、周囲を巻き込みながら前に進むための、鳥羽さんならではの覚悟がありました。
糖尿病は「だらしなさ」じゃない。だから言う
――ご病気のことを公表するのは、勇気がいる決断だったのでは?
鳥羽周作さん(以下、鳥羽シェフ):糖尿病って、生活習慣病の一種じゃないですか。世の中的には「暴飲暴食してる」「だらしない」「運動してない」っていうイメージで見られがちなんですよね。
だから、糖尿病になっても周りには言わない人が、実はかなり多いらしいんです。でも、僕はそういう感覚がまったくなくて。
むしろ「言っちゃったほうが楽」だと思ったんです。公表したほうが、周りも事情をわかってくれるし、応援もしてもらえる。性格的にも、隠すのはなんか合わなかった。
実際、言ったことでスタッフみんなが気を遣ってくれるようになりました。たとえば、まかないの量を少なくしてくれたり、鶏もも肉より鶏むね肉の割合を増やしてくれたり。運動に関しても一緒にスタッフと筋トレしたり、そんな感じで自然にサポートの輪に入ってくれて。
そういう意味では、公表したことで得られたものがすごく大きかったです。
「病気をビジネスに変える」という発想
――公表をビジネスのチャンスと捉えた、ともおっしゃっていましたね。
鳥羽シェフ:そうなんです。僕はちょっと特殊なのかもしれないけど、「これ、ビジネスになるな」と思ってしまった(笑)。
“ご飯の人”でもあって、しかも糖尿病。世の中には「糖尿病=食事が大変」というイメージがある。
だったら自分が病気をしっかりコントロールして、数値も改善させて、その間に食べてきたものやノウハウをまとめて発信できたら、ものすごく需要があるんじゃないか、と。
たとえば最近だと、小麦粉の入ったルウを使わない“野菜だけのカレー”を作ったりしているんです。カレーのスパイスは使うけれど、市販のルウを使わずに野菜のとろみだけで仕上げる。
あるいは、鶏むね肉をどうやったらおいしく食べられるか、糖尿病の人でも安心して楽しめる胸肉レシピを考えたり。
そういう「おいしい」と「血糖値にやさしい」を両立させた料理を、僕が提案できるのは意味があるなと。現役で、そこそこ知名度もあるシェフで、ちゃんとおいしい料理が作れて、しかも糖尿病の人にリーチできる人なんて、ライバルがいない。完全にブルーオーシャンなんですよ。
「頭で直す糖尿病」は、きっとバズる
――音楽家の方がお耳の病気を公表するように、鳥羽さんも“職業と直結する病”をあえて伝えたのかなと感じました。
鳥羽シェフ:そうですね。おそらく糖尿病のシェフや料理家の人は他にもいると思うんです。でも、公表してない人のほうが多いかもしれません。
僕は幸い、SNSでの発信も良くするし 、言語化も比較的得意なほう。大坂先生もSNSで情報発信している先生だったので、そこも相性が良かった。
「これは本にもなるし、講演会だってできるな」と、最初から思っていました。そしてこのコンセプトを「頭で直す糖尿病」ってネーミングも勝手につけて(笑)。すごくキャッチーだと思うんですよ。
先生の専門知識とエビデンス、自分の考え方、それに後半は実際の食事レシピ。さらに栄養士の先生と組んで、より実践的な内容にしていく。
そんなことができたら、かなりバズる未来が見えますよね。
「糖尿病になって良かった」と本気で思う
――公表したあとの反響はいかがでしたか?
鳥羽シェフ:正直なところ、賛否いろいろありました。でも、糖尿病になって良かったって、本当に思ってるんですよ。
データでもあるらしいんですけど、糖尿病になると、自分の体の状態をマメにチェックするようになるじゃないですか。血糖値、体重、食事内容、運動量…。
つまり、自分のコンディションを常に気にするようになるから、逆に他の病気に気づきやすくなって、結果的に長生きする人もいるらしいんです。
もし糖尿病になっていなかったら、僕はきっと何も気にしないで、今もアイスばっかり食べて、暴飲暴食して、太ったまま、突っ走っていたと思う。
病気になったからこそ、身体のことをちゃんと知るようになった。そう考えると、僕にとっては“学び直しのチャンス”でしたね。
