「死」を具体的に考えるとは—養老孟司先生が語る、がん再発後の心の変化と日常生活
2020年に心筋梗塞、2024年にはがん、そして2025年4月には再発がんが見つかった養老孟司先生。88歳を迎えたいま、治療を受けながら淡々と日々を重ねる姿を、教え子であり医師の中川恵一先生と共に綴った1冊が、いま注目を集めています。『病気と折り合う芸がいる』(養老孟司・中川恵一共著/エクスナレッジ刊)から、一部抜粋してご紹介します。第2回は、おふたりの対談。再発がんがわかったとき——。
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>>88歳・養老孟司先生の抗がん剤体験から考える、病院との“おもしろい”付き合い方「おもしろさが感じられなかったら、さすがに…」小細胞肺がんは転移しやすく手強い。再発がわかってショックでは?
——養老先生は24年5月に小細胞肺がんが見つかりましたが、抗がん剤と放射線治療を受け、見事に回復されました。ところが25年3月、再発がんが見つかったとお聞きしました。現在まだ治療中の養老先生ですが、今日はがん専門医であり主治医のおひとりである中川先生と、がんなどをテーマにいろいろお話しいただければと思っております。
中川 小細胞肺がんは、すべてのがんの中でも手強いがんと言われています。大雑把な数字ですが、がん全体が6割治るところ、小細胞肺がんは1~2割程度とされています。にもかかわらず、養老先生のがんはいったん消えてしまいました。その経緯については、24年に出版された『養老先生、がんになる』にまとめさせていただきました。
しかし、大変残念なことに、今回再発が見つかりました。正直言って状況は楽観できないところもあります。再発と告げられたときのお気持ちについてお話しいただけますでしょうか?
養老 がんに再発は付き物ですし、自分でも完全に治っていたとは思っていませんでしたから、そんなものかなあと……。
中川 でも小細胞肺がんとしては、とてもよい経過だったんです。何がよかったのかというと、小細胞肺がんは転移しやすいのに、それがなかったからです。多くの場合、全身に転移するのが一般的です。
特に脳に転移しやすく、教科書的には脳に予防的に放射線を照射するのが治療の定石となっています。それは検査上、画像に映っていなくても、転移があるかもしれないと考えるからです。
しかし、養老先生の場合、脳はもちろん、他の臓器にも転移がまったく見つかりませんでした。経過がすごくよかったと言ってよいと思います。それなのに、再発された。やっぱりショックだったんじゃないですか?
養老 いや。最初から覚悟していましたからね。それに、昨年の治療が終わってからは、自覚症状があって病院に通っていたわけじゃありません。いわば病院に通わされていたわけです。ドクターから「がんがありますよ」と言われたけど、本人にはわかりません。ショックもなにもありませんよ。
