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「死」を具体的に考えるとは—養老孟司先生が語る、がん再発後の心の変化と日常生活

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ゆうゆうtime編集部

中川 普通の人なら小細胞肺がんと言われただけでも相当ショックですし、再発があったらもっとショックを受けると思います。私も早期の膀胱がんを経験していますが、残りの人生を大切に生きようと思ったからでしょうか、普段飲むワインも今までのものよりも少し値段の高いものにしようと思い、しばらく実行していました。養老先生は、そういった心境や行動の変化はありませんか?

養老 あればいいんだけどね(笑)。いずれダメになると思っていたことが具体的になった、ということくらいですかね。みんな自分が死ぬときのことをあまり具体的に考えていないのが普通ですよね。「誰でもいつか死ぬものだ」と言われたら、「わかってますよ」と答えるでしょう。

その「わかってますよ」というときの具体性が違ってきました。病気が見つかって、放っておいたらまずいとドクターに言われるわけです。そうすると、死というものを具体的に考えるようになります。いつ、どういう形で俺はダメになるのか。具体的というのは、そういうことです。

——若い人や健康な人は、自分が死ぬときのことを考えないのが普通だと思いますが、がんになったら考えるようになると言いますよね?

養老 病気がなければ、自分の死はなかなか具体的なものにはなりません。でも、がんと診断されて治療に入れば考えるでしょう。それは死がより具体的になったからです。

どこかで俺の人生は終わる。そんなの当たり前のことで、ずっと前からわかっていることです。具体的ではないから意識していなかっただけのこと。がんの治療のために病院に通うと、死が目の前に現れる。具体的になってくる。そのときに、人はいろんなことを考えるようになるのでしょう。

Profile

養老孟司(ようろう・たけし)
1937(昭和12)年、神奈川県鎌倉生まれ。解剖学者。東京大学医学部卒。東京大学名誉教授。'89(平成元)年『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。新潮新書『バカの壁』が大ヒット、460万部超えのベストセラーとなる。また新語・流行語大賞、毎日出版文化賞特別賞を受賞した。『養老先生、病院へ行く』『唯脳論』『かけがえのないもの』『手入れという思想』『人生の壁』『まる ありがとう』『ものがわかるということ』など著書多数。

中川恵一(なかがわ・けいいち)
1960年(昭和35)年、東京都月島生まれ。東京大学医学部医学科卒業後、同大学医学部放射線医学教室入局。社会保険中央総合病院放射線科、東京大学医学部放射線医学教室助手、専任講師、准教授を経て、現在、東京大学大学院医学系研究科 特任教授。2003年~2014年、東京大学医学部附属病院緩和ケア診療部長を兼任。共・著書に『医者にがんと言われたら最初に読む本』『養老先生、病院へ行く』『人生を変える健康学がんを学んで元気に100歳』など多数。

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この記事は『病気と折り合う芸がいる』養老孟司・中川恵一共著(エクスナレッジ刊)の内容を、ウェブ記事用に再編集したものです。

病気と折り合う芸がいる

養老孟司著・中川恵一著
エクスナレッジ刊

がん再発後の治療経過と、病気と折り合いをつけながら、淡々と日々を過ごす養老先生が、生と死について、また子どものこと、虫のこと、ネコのこと、自然のことなど多様なテーマについて語りつくす。

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