「イヤだと思ったら、やめてもいい」NHK夜ドラ「ひらやすみ」で衝撃を受けて考えたこととは?【一田憲子さん】
「降りたあと」はどうするの?
ただし、「降りたあと」はどうするの?ということも自分で考えなくてはいけません。ヒロトくんは料理がとても上手です。アクアパッツァをカレーに変身させたり、朝ごはん用の目玉焼きをカリッと焼いたり。ああ、「降りたあと」はこれだけでめちゃ幸せそうじゃん!と思いました。
もっとも東京に平屋を一軒持っている、ということだけで、住む場所があるのですから、すでに「問題」はひとつクリアしています。私たちが「降りる」ことができないのは、家賃を払ったり、食費を稼いだり、「生きるため」のお金が必要だからです。
私も若いころから絶えずお金の心配をしてきました。仕事がなくなったらどうしよう? 家賃が払えなくなったら、食べられなくなったらどうしよう?と不安と背中合わせで生きてきました。安心したいから「もっと、もっと」と稼ごうとして、稼ぐために、誰かに認められ、評価をもらうことを望んできた気がします。
北海道で「たべるとくらしの研究所」を主宰する安斎伸也さんと明子さんは、福島の「あんざい果樹園」を継いで働いてきました。ところが震災を機に北海道に移住。札幌でカフェを10年間営んだあと、2018年に、札幌から車で2時間ほどのスーパーもコンビニもない田舎町に引っ越されました。理由は「消費経済からちょっと距離を取るため」なのだとか。「近くにいると、どうしても流されてしまう。物理的に距離をとったほうが本当にやりたいことに集中できるから」と。
今、彼らは生産者が作った果物や野菜をジャムや瓶詰めにして販売し、月に一度札幌のカフェでお弁当を販売しています。一番の楽しみは、庭に作った薪風呂に家族で順番に入ること。「く〜〜! 気持ちいい〜」。湯気の立ち上る湯船に浸かる伸也さんの姿を見ていると、やればできるのかも……と思えてきます。
「褒められること」を本当の意味で手放すためには、この「お金」との付き合い方の意識を変えなくてはいけないのかなあと感じています。いい服を着ていなくたって、高い調味料を買えなくなって、もうこれ以上器を買わなくたって、今あるもので楽しめればいい……。
もしかして、必要なのは順番を変えることなのかもしれません。決心してから降りるのではなく、降りてから考える。「なくても大丈夫だったじゃん」という実感こそが「売れなかったら負け」という世界から外に出る確かな方法のような気がします。
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