朝ドラ【風、薫る】女郎・夕凪を救う現場で浮かぶ、実習生の甘さと看病婦ヨシのたくましさ
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田幸和歌子
りんがつないでいきそうな廃娼運動と
結局、心中をはかり夕凪にヒ素を飲ませた男子学生は助からず、夕凪は一命をとりとめた。ここでよかったよかったとならないところに、さらに厳しい現実が突き刺さる。
「どうして助けた!?」
救命=余計なことをされたと夕凪は絶望混じりに問い詰める。女郎屋を「地獄」と呼び、死ねなかった自分は「また地獄に戻んなきゃなんない」と絶望する。夕凪に毒を飲ませた男の両親にも一方的になじられる始末である。前作『ばけばけ』で同じような女郎として登場した〝なみ〟は明るくたくましくその境遇から脱しようとポジティブな雰囲気で描かれていたのとは対照的なようにも思える。
生きても地獄、そんな現実に胸をえぐられる思いでいるところに、女郎屋「錦栄楼」の主人・権田(梅垣義明)が夕凪を連れ戻しに病院へと乗り込んでくる。女郎は一人の人間でありながら商品のひとつである。そんな理不尽さが次々と突きつけられてくる。
看病婦のヨシ(明星真由美)がそこに機転をきかせ、言葉たくみに権田をいったん帰らせることに成功した。直美以外はなんだかんだ育ちのいい「お嬢さん」的な女性の多い実習生たちと、生活のために地位が低い扱いだった看病婦をせざるを得ないゆえのたくましさを持つヨシたちとの対比は効果的だ。世間知らずな部分の多い実習生たち、直美とりんはなんとか夕凪を逃してあげたいと思うが「甘い」と本人に切り捨てられるのも、そこが浮き彫りになる分かりやすい演出だ。
りんが卯三郎(坂東彌十郎)に相談するものの、夕凪一人を逃したところで社会が変わるものではないと。正論である。しかしりんは言う。
「目の前で困っている人がいたら、手を差し出したい」
これは看護師の精神そのものに通ずる部分でもある。しかし職業としての看護師はそればかりでは成り立たないものでもある。そのあたりの矛盾と正しさが実によいかたちで散りばめられているような気がするやりとりだ。一人を助けたところで社会は何も変わらなくても、そこから廃娼運動へとつながっていきそうな流れはこの先の描かれ方に新たな興味が芽生えてくる場面であった。
そして、直美はそんな夕凪に、自分は女郎に生み捨てられた孤児であることを告白する。この告白が、夕凪の心にどのような風を吹かせていくのか。直美のアイデンティティの追求と、りんがつないでいきそうな廃娼運動との結びつき、二人の主人公がやはりそれぞれのアプローチを経ながら同じ問題に向き合っていくという、単調にならない見応えある描かれ方によって、夕凪と直美の物語も次週さらなる深みをみせてくれそうな気配だ。
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