更年期の「痩せない」は歩き方で変わる?今日からできる「歩き」の簡単なコツ【足連載/第12歩】
今回は、反響の大きかった連載第3回と第7回にご登場いただいた黒田先生に、さらに聞きたい「歩くことが難しくなった方」へのアドバイスと、更年期世代の足・体のお悩みについて伺いました。無理なくできることから始めて、いつまでも自分の足で歩くためのヒントを教えていただきます。
目次
歩くのが難しくなったら、「立つ・座る」の動作と足指から
――筋力低下などで歩行が難しくなった方が、まず取り組むとよいことは何でしょう?
脊柱管狭窄症や腰椎すべり症などの腰痛症があったり、圧迫骨折が起こったりすると、お尻やももの筋力が弱り、痛みがあるとさらに症状を悪化させて歩くこと自体が億劫になってしまいます。
このとき、できるだけ筋力を落とさないようにしたいものです。専門の運動指導者やマッサージ師、理学療法士などの治療家に関わってもらうとよいですが、自分でもできることがあります。それが、生活の中でできる「座り・立ち」の活用です。
――具体的には、どのように行えばいいのでしょうか?
連載第3回(※)でご紹介した座り方「こんにちは・どっこい・しょ」の動作は同じですが、手で補助するやり方です。
座るときは、「こんにちは」と前傾しながら手を座面に伸ばして、手で支えながらそっとお尻を下ろすようにします。
骨粗しょう症の方は、背骨を守るためにできるだけ静かにお尻を下ろしてください。
立ち上がるときは体の横か前の方に手をつき、「どっこい」とお尻を上げるときに手で押します。
前にテーブルなどのつかまるものがない電車内でも、座り・立ちが楽になります。
座り・立ちの動作は筋トレの「スクワット」と同じ動きなので、少しでも自分の筋肉を使って行うことで、筋力を落とさない生活にしたいものです。
もう一つ、大切なのが足指です。外反母趾や巻き爪などがあると足指に力が入りにくく、体幹の支えが弱くなって、歩くときも転倒しやすく不安定になります。爪をちゃんと切ること、お風呂の中で足指の体操、グーパーなどをしておくことが歩きやすさにつながります。
▼※連載第3回はこちら▼
>>歩きたいけれど寒い!そんな日こそ“家でちょこっと足トレ”【足連載/第3歩】
靴は「履く」だけでなく、足の甲をしっかり締める
――靴の履き方も、歩きやすさに関係しますか?
以前、背中が曲がっていて、足首が痛く、不安定だった生徒さんに、正しい靴紐の締め方をお教えし、「靴紐を締めてください」とだけお伝えしたことがあります。すると「締めただけで足が痛くない、ふらつかないで歩ける」とおっしゃったんです。
なぜなら、扁平足や開張足といったアーチのない足では、指は浮いたり曲がったりして地面を支えられなくなっているので、足首に負担がかかってふらついていたのです。靴紐を土踏まずの位置でしっかり締めることでアーチを作り、足指が自然に下ろせるようになりました。
介護シューズなどの面ファスナーも、しっかり締めることが大切です。足の甲をしっかり締めると、足指が下りやすくなる。指が下りると腹筋に力が入る。腹筋に力が入ると体が起き上がりやすくなる。こうして、一つよくなると全部がつながっていきます。
――雨の日や夜間の歩行では、何に注意すればいいでしょう?
雨の日は、転倒が怖いので、滑りにくいソールで防水機能のある靴を選びましょう。また、鞄は万が一の時に片手が空くようにリュックやショルダーバッグが安心です。
夜間に怖いのは交通事故です。黒い服は車から見えにくいため、かかとに反射板がついている靴や、反射バンドなどを活用するといいでしょう。腕やバッグの取っ手など、車道側から見える場所につけるのがおすすめです。
更年期のダイエットは「量より質」。短時間でも歩き方を変える
――「何をやっても痩せない」というお悩みがある更年期世代。少ない運動で効果を上げる歩き方はありますか?
更年期以降は筋肉量が減っていたり、代謝能力が衰えていたりして、たくさん歩いても脂肪が減りにくくなります。また、体力が落ちているのでそもそも長く歩けなくもなっています。
そこで、まずは「量より質」の歩き方をしましょう。短時間でいいので強度を上げた歩きを取り入れることです。
まず、「まめに早歩き」。1分でも3分でもいいので早歩きを取り入れて、呼吸が早くなる時間を作りましょう。ちょっと歩く時に早歩き1分。階段を息を切らせて上がる、程度でいいです。さらに歩幅を少し広めに意識することで、身体を支える筋肉を鍛えられます。
腕は、左右にぶらさず、前後にまっすぐ、やや後ろへ振ることを意識してください。手を後ろへ振ると体が前へ倒れる仕組みが生まれ、自然と速く歩けて歩幅も広がります。
荷物を持っている場合も、空いている手だけ振れば十分です。リュックなら、できるだけ背中の上のほう、骨盤の上に収まるように背負いましょう。リュックの幅が体より広いと腕が前で狭くなり、「かき分け歩き」になって骨盤がねじれ、腰痛や外反母趾の原因になることがあります。
――更年期に運動がすすめられるのはなぜですか?
更年期の不調には、自律神経の乱れが関係しています。交感神経は運動する時やストレスがかかった時に優位になりますが、運動したあとには副交感神経に切り替わるのでリラックスできるという仕組みがあります。運動後に眠くなることがあるのは、そのためです。また、心にスイッチが入ってやる気が出るのでうつから抜け出す助けにもなりますから、更年期やストレスを感じている時にこそ運動が勧められるのです。
階段も日常動作も、すべて「歩く力」につながっている
――階段を上るのがつらい人へのアドバイスはありますか?
階段を上り切ったら、「健康に近づいた」「今全身の血流がアップした」などと、体にいい刺激があったことをリアルにイメージしてみてください。そうすると、息が切れて苦しくても「よし!」と思えるようになります。
足が上がりにくい場合は、膝の上に糸がついているとイメージして一歩一歩その架空の糸を同じ側の手で軽くつまんで引き上げるようにしてみてください。不思議ですが、自然と足が上がりやすくなります。
不安なら手すりにつかまってでも構いません。脚に負荷をかけて筋肉を使うことが大切です。
――先生は「体は全部つながっている」とお話しされていますね。
たとえば、扁平足で外反母趾がある方は、親指が支えてくれないため、体重がかかったとき足首が内側へ倒れます。するとその上の膝は内側にねじれて、長年続くうちに変形性膝関節症につながることもあります。膝が内側に歪むと股関節は横へ広がるようになり、骨盤が緩んだり腰が反りすぎて腰痛が出たりする。そしてその上の肩こりや首のこりにつながる。全部つながっているんです。
ある日の教室で、首のこりがひどい方が初めて参加されたのですが、足指や足首の体操と立ち姿勢を直しただけで、首が楽になったということがありました。
痛みの原因は複合的です。腰痛一つとっても、足の変形、姿勢、腹筋の弱さなど、さまざまな要素が絡み合っています。だから腰を直接触らなくても、別のパーツを整えることで腰痛がある程度解消できる。それが身体を「下から整える」ということです。
足指のグーパーから始め、靴紐を締め、腕を振って歩く。そうした小さな積み重ねが、歩きやすく転びにくい歩きに替え、更年期世代の体の立て直しまでを支えてくれます。
「一つよくすると、全部がつながる」
黒田先生のこの言葉には、体の仕組みだけでなく、年齢を重ねても「動ける自分」をあきらめないためのヒントが詰まっています。無理をせず、できることからコツコツ続けること。それが、自分の足で歩き続ける力につながっていくのです。
【今日からできる足ケア習慣】
エレベーター、エスカレーターではなく階段を選ぶ。できることから少しずつ。
▼連載バックナンバー▼
>>連載「足が変われば人生が変わる~一生自分の足で歩くために」
▼あわせて読みたい▼
健康運動指導士
健康運動指導士・健康経営エキスパートアドバイザー。「一般社団法人ケア・ウォーキング普及会」代表理事。
人生の最後まで自分の足で歩くことを目的とした「ケア・ウォーキング®︎」「ひざちゃん体操」などを考案。簡単で痛みの起こらない体の使い方や動作改善法を提案し、そのノウハウを活かしてケア・ウォーキング講座を主催している。歩き方や痛みの予防改善のためのボディメンテナンス法も指導。
また、生活習慣病、介護、ロコモ、フレイルなどの予防改善を中心に、健康寿命延伸のための身体活動や運動の必要性を啓蒙。自治体を中心に講演や運動指導を行い、わかりやすい理論と実践を結びつけた講演・セミナー・教室には定評がある。さらに、これらの指導実践をもとに、自治体や企業の事業に関わり、情報提供や研究開発のサポートも行っている。
健康運動指導士・健康経営エキスパートアドバイザー。「一般社団法人ケア・ウォーキング普及会」代表理事。
人生の最後まで自分の足で歩くことを目的とした「ケア・ウォーキング®︎」「ひざちゃん体操」などを考案。簡単で痛みの起こらない体の使い方や動作改善法を提案し、そのノウハウを活かしてケア・ウォーキング講座を主催している。歩き方や痛みの予防改善のためのボディメンテナンス法も指導。
また、生活習慣病、介護、ロコモ、フレイルなどの予防改善を中心に、健康寿命延伸のための身体活動や運動の必要性を啓蒙。自治体を中心に講演や運動指導を行い、わかりやすい理論と実践を結びつけた講演・セミナー・教室には定評がある。さらに、これらの指導実践をもとに、自治体や企業の事業に関わり、情報提供や研究開発のサポートも行っている。
イラスト/草野かおる
韓国ドラマ『元敬(ウォンギョン)〜欲望の王妃〜』ブレない王妃に注目!PR
詳細はこちら
