光石研さんが60代の今、思うこと。「若い人にこびることなく、若づくりもせず。我らは我らで楽しめばいい」
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ゆうゆう編集部
名バイプレーヤーとして注目を集め、映画やドラマなどで幅広く活躍している光石研さん。色とりどりの役柄を背負って生きる俳優生活は今年で45年。そんな節目の年に公開となる新作映画の話を中心に、俳優としての原点や60代の今思うことを語っていただきました。
ヒーローではないおじさんを演じるのが好き
冷徹なヤクザ者から温厚な父親まで、多彩なキャラクターを演じ分ける名バイプレーヤーとして話題の作品に多数出演。どんな役柄でもリアルに感じさせる説得力のある演技で、映画やドラマに欠かせない存在となっている光石研さん。
そんな光石さんにとって約12年ぶりとなる単独主演映画『逃げきれた夢』が6月9日、公開となる。光石さんが演じる主人公は、どこにでもいるような「フツウのおじさん」。
「主人公はヒーローではありません。何でもないおじさんにスポットライトを当てて、その数日間の日常を切り取ったような映画。そこが作品の魅力でもあると思います」
主人公は、北九州の定時制高校で教頭を務める末永周平。背広の上にジャンパーを羽織り、鞄を肩に掛けて歩く姿には哀愁が漂う。学校では生徒思いの好人物を演じ、家庭でも妻子に気を遣うが相手にされず……という、やや情けない男だ。
「周平は真面目で一生懸命。だけど、ちょっと不器用なところがある人物です。二ノ宮(隆太郎)監督には、中年のおじさんの悲哀をよくぞここまで書いてくださった、ありがとうございます、という思いです」
実は本作、子どもの頃から光石さんのファンだったという二ノ宮監督が、光石さんをモチーフにして「あて書き」(その役を演じる俳優を決めてから脚本を書くこと)したもの。光石さんの人生をも取材し、そのエッセンスを物語に注入した。
「僕自身、周平のようなタイプの人間なのかもしれません。自分がモデルになっているだけあって、自分自身と重なるところ、理解できるところがたくさんありました。僕は生きるのに不器用な人、ヒーローにはならない等身大のおじさんの役が大好きだから、自分自身を参考にしながら演じた部分もあります」