【らんまん】朝ドラ歴代ヒロインの名前が散りばめられ、朝ドラファン盛り上がる
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田幸和歌子
朝ドラを見るのが1日の楽しみの始まりとなっている人、多いですよね。数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。より深く、朝ドラの世界へ!
長田育恵作・神木隆之介主演のNHK連続テレビ小説『らんまん』の第16週「コオロギラン」が放送された。
7月14日の封切りから話題沸騰中の宮崎駿監督最新作『君たちはどう生きるか』。今週は奇しくもそんな「君たちはどう生きるか」の問いが、働くすべての人、そしていずれ働く子どもたちにわかりやすく提示されるような内容だった。
万太郎(神木)との共同研究の末に、万太郎が高知で見つけた新種「ヤマトグサ」を植物学雑誌で発表し、助教授に昇進して、ますます植物学にのめり込むようになった大窪(今野浩喜)。一方、田邊教授(要潤)は、研究していたトガクシソウを、ケンブリッジ大学留学中の伊藤孝光(落合モトキ)に先に発表されたことで、発表のチャンスを失ってしまう。
遅れていた日本の植物学研究が一気に進む中、学問の世界の厳しさを知った藤丸(前原瑞樹)は心が折れてしまい、万太郎に相談すべく、長屋を訪ねる。
「組織」や「権力」の埒外にいるとはいえ、天才ゆえに本来は誰よりそうした苦悩を解さないであろう万太郎を頼る藤丸は、根っから大らかな性分だと思うが、丈之助(山脇辰哉)やゆう(山谷花純)らに話を聞いてもらう中、息ができない心情を吐露する。
すると、万太郎は自分の「特性」を見つけ、「競い合わなくて良い、人とかぶらん、最初の一人になる道」を探すよう勧める。それは途方に暮れるほど寂しく孤独な道かもしれないが、「競争」で心が疲弊するタイプにはむしろ気が休まる生き方だろう。
一方、藤丸が去り、寂しい思いをしながらも、植物学で戦っていく覚悟を決める波多野(前原滉)もまた、自分の「特性」を探していた。国内、あるいは世界でももしかしたら万太郎に並ぶ精巧な植物画を描ける研究者がいない状況で、ただ羨むのでなく、諦めるでもなく、答えが見つかるかわからない道——例えば受粉など、肉眼では見えない命の仕組みを見ること——を歩もうとしていた。
そんな中、万太郎に匹敵するレベルの植物画を描けと田邊教授(要潤)にムチャブリされた画工・野宮(亀田佳明)は、波多野が一生を懸けても見ようとする世界に共鳴し、波多野の「手」になることを約束する。万太郎にも見えない肉眼で見えない世界を顕微鏡で探し求めることを決めた波多野と、絵描きの腕はあっても植物のことはわからない野宮とが組み、二人の「特性」を掛け合わせることで、一人の天才を凌駕する可能性も生まれる。これは、強敵を前に怯まず、知恵を絞ることで活路を見出す、何でも自分でできてしまう万太郎にはできない戦略であり、戦い方だ。