ヤマザキマリさん流 老いと死の向き合い方。「老いはそのまま受け入れてしまったほうがラクなのでは」
私も40歳を過ぎてから随分歯の治療をしましたが、これが過去であれば、何十年も頑張ってきた歯の寿命はおそらくそのくらいであり、歯科医療が発達していなかったあの頃は、そのまま歯が抜けてしまうに任せておくしかなかったはずです。そうすると何が起こるのか。ご飯を咀嚼できなくなるわけです。口にできるのは、栄養価の低い、やわらかいものばかりになっていき、胃腸もそれに合わせて消極的な動きしかしなくなっていく。人は歯を失うことで食を細め、徐々に死への準備をしていたように思います。
しかし現代では歯科医療をはじめあらゆる病気を改善できるようになりましたし、サプリメントや何やらで身体の丈夫さだけはキープできるようになりました。しかし、脳の老化に伴う病気の治療はそこまで進んでいない。だから体は元気なのに脳が老化してしまうという現象が起こってしまう。
人間は肉体の延命に尽力し続けてきましたが、脳とのバランスについてはそこまで考慮されていなかったということでしょう。
息子に自分の物忘れを指摘されたりする時、100年前であれば私はもう立派なお婆さんで、死を意識した毎日を過ごしていたはずなんだよな、と思い起こします。それもまた、私が日々死についてを考えるきっかけの一つになっていることは確かです。
※この記事は『CARPE DIEM 今この瞬間を生きて』ヤマザキマリ著(エクスナレッジ)の内容をWEB掲載のため再編集しています。
CARPE DIEM 今この瞬間を生きて
ヤマザキマリ著
エクスナレッジ
幼少期から老人と触れ合い、親の介護、そして死を経験し、多種多様な「老いと死」に触れ、国境をこえた生き方をしてきたヤマザキマリさんが、豊かな知見をもとに考えたことを綴ります。「若さ」と「老い」の価値、他人や他の生き物との「共存」、「ありのままの自分を許す」ことの大切さなど、今この瞬間を楽しむ、明るく人間らしい「善い」生き方を考えます。寿命が何歳であっても「その時」まで思い切り自分の人生を生きたい、そう前向きになれる1冊です。
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