70代でも始められる投資法「年金の繰り下げ」その方法は?
新年を迎えるにあたって、得するお金の管理術を心得ておきたいものです。「2024年はお金の『使い方』『貯め方』『増やし方』の3つの角度から見直して、それぞれの方針を決めましょう。効率よく管理できます」と話すのは、ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さん。第3回は「増やし方」のポイントを教えていただきました。
第2回はこちら。【お金の貯め方】プロも指南する「ポイ活・固定費の見直し」で月数千円の節約も!?【中編】
目次
お話を伺ったのは
井戸美枝さん
いど・みえ●井戸美枝事務所代表。ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士として相談業務、講演、執筆活動を行い、お金に関する動きをやさしく解説。
2022年、老後を見据えて広い一軒家からコンパクトなマンションに転居した。
『親の終活、夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新書)など、著書多数。
マチュアリストにて「老後のお金不安はいまから解消!」を連載中。
【最新・お金の増やし方】「年金の繰り下げ」と「新NISA」が◎。無理なく働くのも、預貯金を増やすコツ
年金の繰り下げは、8.4%の高利回り!
「最後に、お金の増やし方の方針を決めましょう。特にインフレの今は、増やすことが生活防衛に。マチュア世代におすすめの方法は3つです」
1つ目は、年金の繰り下げ受給。年金の受給開始年齢は原則65歳だが、希望すれば66歳より後に繰り下げることができ、1カ月繰り下げるごとに年金額が0.7%増額される。
「銀行の定期預金金利が0.002%の時代に、この増額率は見逃せません。1年遅らせて66歳にするだけでも、老齢基礎年金を約6万5000円増やせます(満額納付の場合)」
ただし、年金受給を遅らせた分、預貯金を取り崩してしまっては本末転倒。65歳以降も働いて収入を得る、夫の年金で生活して妻の年金は繰り下げるなど、できることを考えよう。
「また、繰り下げは75歳までできますが、あまり遅くまで繰り下げると、生涯でもらえる期間が短くなり、受け取り総額で損をする場合も。妻が夫より年下の場合、夫が老齢厚生年金を繰り下げている間は、加給年金がもらえないデメリットもあります。夫婦で、誰のどの年金をいつまで繰り下げるといいのか、さまざまなパターンをシミュレーションして、一番いいタイミングを探してください」(表2)
【年金の繰り下げ】年金は必要なときに多く受け取りたい
90歳まで生きるなら、70歳受給が最もお得!
年金を受け取る年齢は、60~75歳の範囲で自由に設定できる。早く始めるほど毎月受け取る年金額は減り、遅く始めるほど増える仕組みで、75歳では84%もアップ。ただ、一生涯で受け取る年金の総額で考えると、何歳まで生きるかで損得は変わる。
厚生労働省によると、これから65歳を迎える年代の女性の7割近くが90歳まで生きると見込まれている。仮に90歳まで年金をもらうとすると、年金は70歳から受給するのが最もお得、ということに。
長生きの可能性が高い妻の年金を繰り下げよう
年金の繰り下げには、「老齢基礎年金のみ」「老齢厚生年金のみ」「両方とも」「夫婦それぞれが両方別々に」などの方法がある。夫が65歳時に妻が65歳未満の場合は、夫は老齢厚生年金を繰り下げずに加給年金(年間39万7500円)をもらったほうがお得。また、妻が老齢基礎年金だけの場合は、夫の年金は予定どおりもらって生活費に充て、妻の年金を繰り下げて額を増やすと安心だ。
65歳で年金を請求しなければ自動的に繰り下げとなり、途中でお金が必要になればいつでも年金を請求できる。家計や家族の状況に合わせて、柔軟に対処しよう。