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【色の名前クイズ】どっちが「秘色(ひそく)」?

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ゆうゆうtime編集部

秘色は【A】

唐の時代の中国越州窯で、鉄分を含んだ淡青色の釉薬(ゆうやく)を全体にかけた磁器が初めてつくられました。1000年以上も昔にこのような美しい磁器が出現したことからまず天子に献上され、臣下諸衆の使用が禁じられたため、この青磁は秘色と呼ばれました。

陸亀蒙(りくきもう)は「九天の風露が越窯を開けば千峰の緑を奪いとることができる」とこの磁器を賛美しています。平安時代の貴族たちが手に入れたのは、唐代から南宋にかけてつくられた青磁かもしれません。

「宇津保(うつぼ)物語」では「秘色の杯(つぎ)」が高官の邸宅で用いられているし、「源氏物語」の「末摘花(すえつむはな)」には「御台、秘色やうの唐土のものなれど」という記述があります。どうやら中国(もろこし)から渡来の秘色のようなもののようです。この色名は青磁の色とわかっていてもどことなく現実味が乏しく神秘的です。

それでは【B】は何色?

【B】は濡羽色(ぬればいろ)

寄席の講談や落語で美人の決まり文句になっている「髪は烏(からす)の濡羽色」というのは、艶のある美しい黒髪のことで、本来、黒の色名です。濡烏ともいいます。

もともと濡色という表現がありました。土も石も草木の緑も、雨に濡れると見る見るうちに色が濃くなり暗くなります。そんな色が濡色です。本来、黒い烏が雨に濡れればもっと黒くなるというわけです。濡烏は紫みのある光沢をもつ黒のことだといいます。

物の色の濃さ暗さは、その物体の表面状態と関係があります。表面が粗い粒子でできていると、光があらゆる方向に拡散反射されて白っぽい色に見えますが、光沢のある滑らかな表面では入射光はそのまま正反射して、そのほかの方向から見るとその反射光が目に入らないので、白い光で薄められない物体固有の反射光だけが見えます。漆黒が真っ黒なのも同じ効果。

※この記事は『増補改訂版 色の名前事典519』(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

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監修者

一般財団法人

日本色彩研究所

日本で唯一の色彩に関する総合研究機関。1927年画家・故和田三造氏により日本標準色協会として創立。1945年財団法人日本色彩研究所として改組。1954年、世界に先駆けて「修正マンセル色票」の色票化研究に着手し、諸外国の研究機関に寄贈するなど、長年にわたり先端的な研究を続ける。諸省庁、自治体からの要請への対処、JISの制定や関連色票の作成等への参画、ガイドラインの提案などに携わる。

日本で唯一の色彩に関する総合研究機関。1927年画家・故和田三造氏により日本標準色協会として創立。1945年財団法人日本色彩研究所として改組。1954年、世界に先駆けて「修正マンセル色票」の色票化研究に着手し、諸外国の研究機関に寄贈するなど、長年にわたり先端的な研究を続ける。諸省庁、自治体からの要請への対処、JISの制定や関連色票の作成等への参画、ガイドラインの提案などに携わる。

増補改訂版 色の名前事典519

日本色彩研究所監修
福田邦夫著

日本における色彩研究の第一人者である「色の巨人」福田邦夫氏の色名事典のバイブル最新刊。福田氏ご逝去(2013年)の後、氏が深く関わった日本色彩研究所の監修協力を得て全面改訂。前作『新版 色の名前507』に12色を加えて519色に。JIS(日本産業規格)の269色を含む全色の正確な色見本にマンセル値、RGB、CMYKのデータを網羅。また、国内外の多くの文献をもとに色名から広がる色の世界が語られている。内容の信頼性の高さに加え、風趣に富む文章で色彩文化の読み物としても楽しめる。本改訂では平安時代からはじまる雅な「かさねの色目」79色をプラス。色値もすべて再確認し適宜修正、文章も現代に合わせて最低限の修正を加えている。色が好きな人、色の仕事に関わる人、すべてに「先人の色彩命名における言葉づかいの妙と、色に対する感性の豊かさを楽しんでいただければ幸いである」という福田氏の思いが伝わる決定版。

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