88歳の科学者【中村桂子さん】長寿の秘訣とは?「贅沢、無理、競争。私の辞書にはない言葉です」
規則正しい食生活で体調がよくなった
4年前、中村さんはJT生命誌研究館の館長を退任し、時間にゆとりができた。
「ちょうどその頃、新型コロナウイルスの感染拡大で外出できなくなったため、3食を自分で作るようになりました。朝食は庭仕事を終えてから、お昼は12時、夕食は7時ぐらいと決めて。規則正しく食事をするようになったら、胃腸の調子がすごくいいの。自粛生活は人に会えずつらいことも多かったけれど、マイナス面だけではなかったんですね。今もこの食習慣は続けています」
そのおかげか、88歳の今も「健康診断の数値は問題なく、薬やサプリメントは一切飲んでいません」と言う。健康体をつくる日々の食事内容について伺うと––––。
「ごく普通の家庭料理です。昨晩は、少しお肉を焼いてフライドポテトを添えて、あとは野菜スープと、きゅうりが残っていたから梅きゅうを作りました。デザートは果物にヨーグルトをかけたもの」
栄養バランスのよさそうな食事だが、ご本人は、「スーパーで食べたいなと思った食材を買い、家にあるものを使い切ることを考えて作っているだけ」だと言う。
「『健康のために』何かを食べて、何かをするということは私の生活習慣にはないですね。『贅沢』という言葉も、私の辞書にはないんです。
だから食事も、ごく普通の家庭料理を普通の量だけ食べれば満足。もちろん、ときには誘われて外食を楽しみます。でも先日久しぶりに洋食のフルコースをいただいたら、胃腸が疲れちゃって。申し訳ないけれど、うちで食べるほうがいいわって思っちゃいました」
若い頃から文武両道で、スポーツも大好き。大学時代に始めたテニスを今も続けているという。
「近くに住む大学時代の仲間に誘われて、たまに参加する程度です。週何回とか決めて、無理してやろうとは思いません。競争心もないんです。コートでボールを追いかけるのは気持ちいいし、たまに思いどおりの場所にボールがスコンと入れば天にも昇る気持ちに(笑)。でも勝敗にはこだわらないし、すぐ忘れちゃいますね。だって趣味で楽しんでいるのだから、人と競争する必要はないんです」
贅沢をしない、無理をしない、競争をしない、そんな中村さんの生き方が、柔和な笑顔に表れている。
たまのテニスでリフレッシュ
【後編に続きます】
※この記事は「ゆうゆう」2024年11月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。
撮影/佐山裕子 取材・文/村瀬素子
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