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88歳で「薬もサプリも一切飲んでいません」【中村桂子さん】の4つの元気習慣とは?[後編]

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ゆうゆう編集部

88歳ながら「健康診断の数値は問題なく、薬やサプリメントは一切飲んでいません」と話す生命誌科学者の中村桂子さん。その元気の秘訣とは?

▼前編はこちら▼88歳・科学者【中村桂子さん】の長寿の秘訣とは?「贅沢、無理、競争。私の辞書にはない言葉です」

Profile
中村桂子さん 88歳・生命誌科学者
なかむら・けいこ●1936年東京生まれ。東京大学大学院生物化学修了。
結婚、出産を経て71年に三菱化成生命科学研究所に入る。
93年JT生命誌研究館の設立に携わり、2002年から20年まで館長を、現在は名誉館長を務める。
『老いを愛づる』(中公新書ラクレ)など著書多数。

88歳は一度しか味わえない。今を楽しまないとソン

中村さんの考えの根底にあるのは、「人間は生き物」という生命誌の基本認識だ。「生き物と思えば、ラクに生きられるんですよ」と。

「動物を見ているとわかりますが、生き物にとって大事なのは『今』です。過去がどうだった、これからどうなるんだろう、なんて考えるのは人間だけ。私も生き物から学んで、今できることをやればいいと思っているんです」

そう考えれば、「昔はできたのに、今はできない」と過去の自分と比べ、できなくなったことを数えて気が滅入ることもなくなる。 

「もちろん私も能力の衰えや見た目の変化を感じますよ。でも、そもそも生き物は、生まれて、育って、成熟して、老いて、死ぬ、という一生をたどるのだから、それぞれの時期を楽しまないと損な気がしますね。たとえば私も昔は駅や庭の階段をササッと上り下りできたけれど、この年になると、階段を踏み外したら命に関わります。今は手すりがあればつかまって、注意深くゆっくり足を運ぶので時間がかかります。でも、おかげで周りのものがよく見えて、こんな場所に小さな花が咲いているとか、急いでいたときには目が向かなかったことに気づいたりするんです」

老いることは決してネガティブなことではないという。

「人は一年一年、さまざまな経験を積み重ねて、それが知識や智恵になっているわけです。たとえば70歳の人は体験してわかってることが、50歳の人にはわからない。つまり70歳でなければ味わえないこと、できないことがあるはずです。私は今88歳ですが、ここまで生きたからこそ体験できたことを生かさなければと思うと、やることっていっぱいあると思うんです」

その一つが、孫やひ孫の世代が暮らしやすい世界にするために「土」の重要性を伝えていく活動だ。

「近年の気候は、いちばん心地いい春と秋が短くなり、猛暑のあとにすぐ冬が来る。世の中の人々が利便性を求めて高層マンションに住み、土から離れてしまったことが、気象などに影響しているのではないかと。それで今、小学校で農業科の授業を行うところが2つ、3つと少しずつ増えていて、その普及に力を注いでいます。単に農業を体験するのではなく、国語、理科と同じように科目として農業を学ぶのです。すると、土や食べ物と自分がどう関わり合っているか考えるようになりますよね。そういう子どもたちが増えれば、社会も変わっていくと思うのです」

自身が学び研究してきたことを次世代につなぐ。「今」できることに一生懸命取り組み、今を楽しむ中村さんには、前向きなエネルギーがみなぎっている。

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