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「光る君へ」『栄花物語』の作者・赤染衛門はどんな人?意外な人物と同じ年だった!?

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鷹橋 忍

NHK大河ドラマ「光る君へ」がクライマックスを迎えています。吉高由里子さんが演じる紫式部の周りには、興味深い人物が次々に登場! 今回は、黒木華さんが演じる源倫子が「道長の栄華の物語を書き記して欲しい」と依頼した、赤染衛門に注目。作家 鷹橋 忍さんに、ご紹介いただきましょう。

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大河ドラマ『光る君へ』では、黒木華さんが演じる源倫子が、凰稀かなめさんが演じる赤染衛門に、「道長の栄華を物語として書き記して欲しい」と依頼し、赤染衛門は快諾しました。

赤染衛門はどんな物語を綴るのでしょうか。

意外な人物と同じ年?

赤染衛門は、平安中期の女流歌人です。
中古三十六歌仙の一人に数えられ、百人一首にも、以下の歌がみられます。

やすらはで寝なましものを さ夜ふけて かたぶくまでの 月を見しかな
(来て下さらないとわかっていたら、ためらうことなく寝てしまいましたのに、いらっしゃるとの言葉を信じて待ち続けていたら、夜が更けて、西の空に沈もうとする月まで見てしまいました)

赤染衛門の生年は明らかではありません。
上村悦子『王朝の秀歌人 赤染衛門』では、天徳元年(957)ごろと推定しているので、仮にそれでみると、秋山竜次が演じる藤原実資と同じ年になります。

出生にまつわる謎?

赤染衛門の父は、赤染時用(ときもち)とされます。

ですが、本当の父親は、「しのぶれど 色にいでにけり わが恋は 物や思ふと 人の問ふまで」の歌で知られる歌人の平兼盛で、母が赤染衛門を懐妊中に兼盛と離別し、赤染時用の妻となったともいわれています。

長寿を保つ

やがて、赤染衛門は益岡徹さんが演じた源雅信と、その妻である石野真子さんが演じる藤原穆子が暮らす邸に出仕し、源倫子に仕える女房となります。
倫子は赤染衛門より、7歳年下となります。

出仕中に、当代随一の碩儒(深い学問を身に付けた学者)と謳われた大江匡衡と結婚し、少なくとも一男二女に恵まれています。

倫子と道長の娘・見上愛さんが演じる彰子の入内にも、同行したと考えられています。

赤染衛門の没年は不明ですが、長久2年(1041)に、曽孫となる大江匡房(まさふさ)の生誕を祝った歌があるので(『赤染衛門全集』)、数えで85歳年のまで生存が確認されています。

そんな赤染衛門が執筆したと推定されているのが、『栄花物語』です。

『栄花物語』とは

『栄花物語』は、藤原道長の栄華を描いた歴史物語です。

歴史物語とは、男性が漢文で記す「六国史」などの正史に対して、歴史的事実を女性たちが使う仮名で、物語風にあらわしたものです。平安時代に発生し、『栄花物語』はその嚆矢といわれます。

『栄花物語』は正編30巻、続編10巻の全40巻から成ります。

正編は宇多天皇から後一条天皇の長元元年(1028)まで。
続編は後一条天皇の長元3年(1030)から堀河天皇の寛治6年(1092)までの、15代・約200年の歴史が道長の栄華を中心に、物語風に綴られています。

赤染衛門は、正編を執筆したと推定されています。
現代語訳も出版されていますので、手にとってみるのもいいかもしれません。

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