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お墓でまさかのダブルピース!ナベべ(緒方直人)満面の笑顔になごまされた【おむすび】

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田幸和歌子

歩を軸としたストーリーとして考えれば……

それにしてもだ。渡辺の悲しみからの救済に大きく関わったのは歩だ。チャンミカの交際詐欺からの盗難事件、ガーリーズの閉店危機も歩の存在は大きい。さくら通り商店街の活性化につながるギャルファッションと結びつけた投稿も歩の功績だと言っていいだろう。

失業して困っていたルーリー(みりちゃむ)をガーリーズに紹介したのも歩だし、なんならプロ野球選手への夢が絶たれ落ち込んでいた翔也(佐野勇斗)をパラパラの力で笑顔を取り戻させたのも歩である。「困っている人」を助けてるという、「米田家の呪い」は、歩が多くを引き受けてきている。

ヒロイン不在の2週間、もしかしたらまるごとなくてもメインのストーリーはつながるのかなという気はもともとしていたが、ここでちょっと逆に考えてみる。歩を軸としたストーリーとして考えれば、それこそ結関連のエピソード(ギャルサーや書道、野球の応援、専門学校や栄養士への道などなど)を取り除いても十分成り立つのではないか。

一緒にギャルになろうと楽しい日々を過ごしていた親友、そして育った街並みと家を95年の震災で突如として失ってしまう。その喪失感。父の故郷である糸島での日々、親友の遺志を継ぐような形でギャルとなり、博多のレジェンドにまでのぼりつめる。

ギャルを認めない父との確執と家を出てからの苦労、もう一度帰ってからのドラマ内でのエピソード……成り立つというよりむしろシンプルなドラマのルートが組み立てられたのではないかという気もしてきた。結婚・出産、そして試験勉強期間ずっと動きがなく、訪問者の報告の聞き手と化していたヒロインの姿を見続けてきただけに、それがいっそう際立って感じられたのかもしれない。

ともあれ、真紀の喪失をめぐる歩と渡辺の物語はここでいったん終了となった模様。真紀の墓の前での二人のやりとりはよかったし、「アゲー!」と、墓場でまさかのダブルピースするナベべ満面の笑顔にも思わずなごまされた。

「ギャルの力で日本を元気にする」「キング・オブ・ギャルを目指す」と、どこまでもギャル魂を忘れず前に進む歩に清々しさを感じた。商店街問題も、お互い前向きに競い合いながら共存共栄を目指す方向に落ち着きそうだ。

あれ? 結が管理栄養士になれるかどうか以外、だいたいのことがうまくおさまった? という気もしなくもなく、ここで終わりでも、「あれどうなった?」というものがほぼない気がする。

そんな次週は、猛勉強の甲斐あって無事難関の管理栄養士の試験に合格したと思われる結の物語が描かれる新章に突入する模様。ある意味「続編」のような新鮮な気分で視聴にのぞんでみたい。

「おむすび」第82回より(C)NHK

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