普通のパート主婦がなぜ!?50代後半で野菜の委託販売を始めるまでの道のりとは?【50代の仕事始め#2前編】
これからの仕事について、どうしようかと考えたことがありませんか? 50代で新しい仕事に踏み出す一歩は、勇気がいることかもしれません。やりたい仕事の見つけ方などヒントがいっぱいの「50代の仕事始め」。今回お話をうかがったのは、ごくふつうの専業主婦からパートに出て、ある資格を取得。そして農業に挑戦し、今はまたカフェのお手伝いと、新しいことに挑戦し続ける斉藤享子さんです。2回に分けてご紹介しましょう。
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斉藤享子さん(58歳)
農作物委託販売業、アクセサリーオーダー制作販売、カフェアルバイト。
短大卒業後、証券会社で3年勤務。92年に結婚してから、2008年に学習塾でのパートを開始するまで専業主婦。グルーデコ認定講師の資格を取り、2018年にパートを退職。アクセサリーの制作販売を始める。コロナ禍の真っ只中に農家の手伝いを始め、徐々に販売委託業もスタート。その傍ら、友人のカフェで週3日勤務。家族はご主人と、独立したお嬢さんと息子さん。趣味は音楽鑑賞、ライブに行くこと、ご主人との温泉旅行など。
コロナの真っ最中に農家に弟子入り!?
「食べるものが体をつくる」というお母様の考えを受け継いで、食を大切にしている斉藤さん。
育児をするようになってますますその気持ちは強くなったそうで、毎日のお弁当づくりやオーガニックの食材の調達など、専業主婦時代も熱心に取り組んでいたとか。
「でも、農薬や添加物が使われていない、本当に安心して食べられるものって、なかなか見つけるのが難しいなといつも思っていました」
そんな折、お友達に誘われた自然を守るためのワークショップで、県内の無農薬農家を紹介してもらい、お手伝いをしに行くことに。
このときすでに50代半ば。畑仕事などとは縁のなかった斉藤さんですが、なぜか積極的に行ってみようという気になり、‘’初心者丸出し‘’の、ふつうの雨用の長靴にジーンズで通い始めたそうです。
「畑の土に、微生物の住処となる竹の炭を混ぜ込んだり、種まき、苗づくり、草刈り、収穫、天日干しなど、様々な作業を体験していました。
自分で苗の植え付けをした、玉ねぎやさつまいもや落花生が、こちらの想いを受け取り、少しずつ、大きくなっていく様子を見守ることは、子育てに似たようなところもあります。
やがて収穫の日を迎えると、なんとも言えない達成感があります。
ひとつひとつの野菜に、どれだけの手間と時間がかかるのかという事を思い知りました」
毎日元気に体を動かしながら新しいことを知る喜び。作業が楽し過ぎて、結局その農家には2年間、ほぼ毎日通ったそうです。
「この農業の体験を通して自分も自然の一部であるということを、より深く理解できました」
そして同時に学んだ、農業の厳しさも……。
「野菜は、一生懸命作っても、天候や色々でうまく育たないこともあったりするんですね。そして農家さんは、野菜を無事に育てることで忙しく、その先の販売まで手が回らないことも多いとわかって、自分は、その販売するためのお手伝いができるのでは?と思ったんです」
野菜の委託販売をスタート
お手伝いを初めて2年が経つころ、斉藤さんは、通っていた農家だけではなく、近隣の生産者にも声をかけ、オーガニック野菜と果物を販売する公式LINEを開設しました。
「農家さんから依頼のあった野菜や加工品を販売するための配信をしています。配信内容や値段などは、個々の農家さんとそれぞれ相談して決めています。私の報酬は、個々の農家さんと取り決めをして、商品一つあたりにつき何割、という形で得ています」
「自分がただの消費者だった頃は、そういう安心食材の情報にはとても敏感でしたので、きっと買ってくださる方はいらっしゃるだろうと思いました。生産者にも購入者にも喜んでもらえるのはとても嬉しいことでしたけど、収入に結びつくかというとそうでもない(笑)」
斉藤さんは、それでも良いのだと言います。
「農業の経験は、自分の価値観を変えてくれたんですね。今は目に見えるものが全てではないということが実感できます。野菜も、スーパーに並んでいる姿だけではなく、種や苗から誰かが大切に育てている、そんなことを教えてもらいました。損得勘定なしでお手伝いしたいという気持ちなんです。自然の仕組みに触れるようになってから、周りへの感謝の気持ちも強くなりました」