濡れ衣だ！介護の日々に起きた事件簿「意外なゴミ出し」の真相とは【認知症母との介護生活#38】

▼「認知症母との介護生活」マンガ　1話から読む▼

ゴミを出したのは誰？

これは　実話です

夕飯時
インターホンが鳴って
玄関を開けると

そこには　清掃局の人が
大きなゴミ袋を持って
立っていて

これ
お宅のゴミ袋じゃないですか

と言われたけど
突然
そんなこと　聞かれても

私が　言葉に詰まっていると

ここに　ホラ
オタクの名前が書かれた紙が
ちらっ　と見えたんですよね

と
『偶然　見えたんだけどね』風を
装うのは
個人情報保護法で
クレームをつけさせない為か

確かに
半透明の袋の中には
私の名前が印刷された紙が
見える

多分　私が
封筒を　資源ゴミにするために
そこ貼ってあった宛名を　剥がした
その紙だろう

確かに　我が家のゴミですね…

そう　答えると

これ
いつ　出しました？

今日は　ペットボトルの日ですよ
知ってました？

と　詰問するような言葉が　続き
その後

このゴミが
集積所に収集されずに　残ってて
困る

と　ご近所から
クレームが入ったんですよね

と　言われた

ご近所から　クレーム？！

その言葉に
一瞬　頭が真っ白になった
私

私の住んでいる　自治体は
小さなブロックごとに
ゴミの集積場所が
決められていて

清掃車は
そこに置かれたゴミを
収集している

でも　ここは
土地に余裕のない　東京

集積所は
どこかの家の門の脇　とか
私道の角　といった
誰かの好意を　前提に
設けるしかなく

だから
ゴミを置くのは
できるだけ　短時間

つまり　収集時間である
朝８時直前に出すのが
望ましい

のだけど

一人暮らしのアパートの　住人など
仕事の都合で
そうもいかないこともある

そんな彼らと
集積場所近くの住人とのトラブルが
時々　あったのは
知ってた

けれど

まさか

自分が
クレームを付けられるとは

しかも　それが
私にとっては
まったく　身に覚えがない

狐に　つままれたような

誰かに　嵌められたような

そんな　ワケわかんない状況で

いったい　私
どうしたらいい？

混乱した頭で
私は　必死に　考えた


実は
我が家のゴミ出しは
母の担当だ

正確に言うなら

私が　夜　寝る前に
翌日の収集に　合わせて
燃えるゴミや　不燃ゴミを
袋に入れ

それを
いつも母が座る　椅子の脇に
置き

予め　作ってある
『今日は　〇〇ゴミの収集日です
この袋を　集積所に出してください』
と書いたカードを
テーブルの上に　置いておく

すると　翌朝
それを見た母が　ゴミを出す

認知症の母でも
そこまでやったら
まだ　ゴミ出しは　できる

逆に言えば

そこまでしないと
今の母は　もう
ゴミ出しができない

ってことなんだけどね

目の前で
清掃員が抱えている　大袋は
確かに　我が家のゴミだ

だけど　私は
昨夜　ゴミを集めたり
母の椅子の脇に置いたり　は
していない

だから　絶対
母に
ゴミを出させていない

でも

だったら　どうして

その時
はた　と思い出した

昨夜
キッチンの　生ゴミ入れが
いっぱいになっていて

それを庭のペールに
入れに行こう　とした時

すでに
シャッターが　降りていた

わざわざ　シャッターを開けるのも
面倒くさいので

私は
袋の口を　しっかり閉じて
そのまま
窓際に置いたことを

と　いうことは…

朝起きて
そのゴミ袋を見た　母が

椅子の脇に
置いてあるわけじゃないけど

いつものカードは　ないけど

これは
出してほしい　ゴミなんだな

と　勝手に解釈して
出した

多分　そういうことだ

だとしたら

袋を室内に置いて
母に　勘違いをさせた
私が　悪い

私は　反省した

だって
母は　認知症

だけど
マンガで描いたように

母の

清掃員の前で　大声で全否定する

まるで

娘の　私のほうが
嘘をついている

と　言わんばかりの

この　自己保身の態度は
どうよ？

一般論として
声高な主張は　耳を傾けやすい

しかも　母は
ちょっとした　短い会話だけでは
認知症には　見えない

清掃員の人は
大声で主張する　母の言葉の方を
信じたに違いない

後から　その時のことを
思い出すと
どうにも　納得できない
もやもやした気持ちになった

翌日

私は
母の　機嫌の良さそうな時に
言った

お母さん

昨日　清掃局のひとが
訪ねてきた時

私は　ゴミ出してない

って言ったよね？

だって
一言　母に言いたかった

犯人は　私じゃない

すると
母は　キョトンとした顔で
言った

えっ
昨日　清掃局のひとが来たの？

何しに？

全然　覚えてないわ～

想像の上を行く　反応に
脱力しながら　思った

こんな時
毎回　思うことだけど

認知症　ズルイ

▼次回はこちら▼

▼あわせて読みたい▼