その株は買えません！認知症母がこれから値上がりしそうと予測した株にびっくり【認知症母との介護生活#39】

▼「認知症母との介護生活」マンガ　1話から読む▼

母が値上がりしそうと予測した株の銘柄は？

これは　実話です

オミクロン

確かに
製薬会社か
精密機器の会社の　名前っぽいよね

先日

母は
いつものように　熱心に
新聞を見ていた

我が家は
新聞離れの風潮も　何のその

未だ　新聞を
定期購読している

母が結婚した当初からだから
かれこれ　7０年近く

特に　株価欄は
時間をかけて　隅から隅まで

というのが
いまだに　母の　ルーティン

母は
結婚して
父の　あまりの安月給に
驚愕し

このままでは
明るい未来は　描けない

と
僅かなヘソクリから
株投資を　始めたらしい

母の実家は　商売をやっていたので
お金儲けに　興味があったのかな

以来

所詮　主婦のヘソクリが
軍資金なので
大した額ではないけれど

日本が　高度経済成長期だったり
運も　味方して

そこそこ
いい思いは　したらしい

バブルが弾けた時
大損もしたらしいけど

とはいえ
そんなことは　とうに昔の話

今は

母の　病気の状態からして

昔と同じように
新聞を 見てはいても

目から入った情報は
母の頭を　素通りし

恐らく
頭のどこかにある　ブラックホールに
一直線に
吸い込まれていってるはず

そう　思ってたんだけどね～

でも

マンガに描いたように

その時の　母の言い方は
あまりに　自然で

評論家然としていて

ストン　と
腑に落ちるものだったので

私は　その様子に
元気だった頃の母の　幻影を見て

つい
錯覚してしまったのだった

淡い期待と共に

バカだよねえ

こんなに　側にいて
一番　病気のことを
わかっているのに

そんなこと　ありえない
って
誰より　知っているはずなのに

でも

子どもが
荒唐無稽な夢を　見るように

もし　母が
かつてのように

楽しそうに　株の話をしたり

友人と　旅行の計画を立てたり

あっちに　出掛け
こっちに　顔を出し

でも　時々は　家にいて
ローストビーフとか　焼いたり

ランチョンマットに
刺繍を　し始めたら…

そんなことを　妄想するのは
いいよね

だって　それだけで
心が
ちょっと　ウキウキして

でも　ちょっと　切なくなって

そして　なにより

そんな気持ちになる
"かつての母"との
しあわせな時間を　思い出すから

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