【渡辺えりさん・70歳】夫婦役で共演する柄本明さんの魅力は“色っぽさ”
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恩田貴子
息子さんの言葉がくれた、役への確信
テル子は実在の人物。それだけに、渡辺さんは当初、役作りに悩んでいたという。しかし、ある出会いがその迷いを吹き飛ばしてくれた。
「先日、鯛山先生の息子さんにお会いできたんです。そのとき、『母に雰囲気がそっくり』と言ってくださって。鯛山先生の他のお子さんたちも、私がテル子さんを演じることを聞いて『よかった』と言ってくださっていたと知り、本当に安心しました。テル子さんはどんな方だったのか伺うと、とにかく明るく朗らかで、包容力のある方だったそうです。旅館で働いていたこともあって、お客さんの接待も上手で、場の仕切りも得意。テル子さんがいるからこそ、診療所にたくさんの人が集まっていた、ともおっしゃっていましたね」
息子さんの言葉は、渡辺さんの中で役柄のイメージを確かなものへと変えてくれた。この役を演じるうえで心の拠り所となるような、大切な出会いだった。
「テル子さんという人はどういう人物なんだろうと、いろいろ悩んでいたんですけれど、息子さんの言葉で『ああ、こういう感じなんだ』って腑に落ちたんです。だからあまり深刻に考えすぎずに、私らしさを生かしながら、大らかに演じたいなと思っています。でもね、ただ大らかなだけじゃなく、舞台ならではの面白さが出るように、これから始まるお稽古で工夫しながら役をつくっていきたいなと。そうだ、劇中に生バンドが登場するから、歌わせてくれって頼んでみようかな(笑)」
70歳にして「生まれて初めて」言うセリフにドキドキ⁉
1978年に劇団「3○○(さんじゅうまる)」を旗揚げして以来、数えきれないほどの作品に出演してきた渡辺さん。それでも、明治座の舞台に立つのは今回が初めてだという。
「明治座の館内のおみやげやさんって、いろんなものが売っているんですよ。そこで何を買おうかと、今から楽しみにしているんです」と、その表情は実に楽しげだ。しかし、今回の舞台での「初めて」はそれだけではない。なんと古稀にして、“生まれて初めて”のセリフに挑戦するという。
「作家としても活躍されていた鯛山先生は、ちょっと色気のあるお話も書いていらしたんですが、今回の台本を読んだらエッチなシーンがあって! 私、エッチなセリフを言うの、生まれて初めてなんですよ。今回のお芝居は地元の山形でも公演があるのに、『やまぎん県民ホールで、本当にこんなこと言っていいのかしら……』って思うようなセリフもあって。70にして、まだ“初めて”があるのねぇ(笑)」
これだけ長く第一線を走り続けてなお、まだ「初めて」が待っている。そのことに臆するどころか、どこか面白がっているような表情がなんともチャーミング。一体どんなセリフが飛び出すのか。それは、舞台の上でのお楽しみとしたい。
【Information】『また本日も休診~山医者のうた~』
昭和50年代、那須高原のてっぺんに建つ見川医院。医師・見川鯛山(柄本明)は地域医療に尽力するはずが、診療所には「本日休診」の札が…。今日も悪友の大工・六さん(佐藤B作)と狩猟やパチンコ三昧で、仕事はそっちのけ。おかげで茶畠巡査(笹野高史)や村人たちには「ヤブ医者」と呼ばれる始末。そんな鯛山を尻に敷きながら、明るく支えるのは、勝気で情に厚い妻・テル子(渡辺えり)。村には、山奥で一人暮らしをする阿久津民代(江口のりこ)、村一番の貧乏人である茂(林翔太)と妻・ナツ(市川美織)など、ひと癖もふた癖もある住民たちが暮らしている。広大な高原に四季が移ろいゆく山村で、繰り広げられる笑いと涙の人間模様とは…。
原作/見川鯛山「田舎医者シリーズ」
脚本・演出/田村孝裕 音楽/パスカルズ
出演/柄本明、渡辺えり、江口のりこ、佐藤B作、笹野高史 他
企画・製作/明治座
【東京公演】2025年10月23日~11月2日 会場/明治座
料金(税込)/S席(1・2階席)1万2000円、A席(3階席)6000円
問い合わせ/明治座チケットセンター☎︎03-3666-6666
他日程
【福岡公演】10月11~15日 会場/博多座
【宇都宮公演】11月6日 会場/栃木県総合文化センター メインホール
【山形公演】11月22日 会場/やまぎん県民ホール 大ホール
公式HP/https://kyushin2025.com/
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