「私が失敗する権利を奪わないでほしい」認知症の人が抱える180の困りごとと向き合う方法
「やめて」と制止する前にできることがある
では、認知症の人に対して、周囲は何ができるのだろうか。
「まずはしっかり話を聞くこと。工夫すれば、困りごとを解決するためにできることはたくさんあります。多くは生活デザインの工夫で解消できるんですよ。本人が行動しやすいように、環境を整えるのです」
できることまで取り上げるのは本人のプライドを傷つけるし、症状を進ませる可能性があるという。
「ある方が、『失敗する権利を奪わないでほしい』とおっしゃっていました。ひとりで外出しないで。刃物や火を扱わないで……。よかれと思っての忠告でしょう。でも、失敗しながらの試行錯誤は脳も体も使う。症状の進行をゆるやかにできると思うのです。火事がこわいならIHコンロを入れるなど、危険が少ない方法を考える。周囲に必要なのは丁寧な対話と想像力、そして、『こうあるべき』という思い込みをなくして暮らしをデザインしていくことだと思います」
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取材・文/本木頼子
※この記事は「ゆうゆう」2025年10月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。
