認知症でも希望を持てる社会へ!認知症の本人が製品・サービスの開発に参画する【オレンジイノベーション・プロジェクト】とは?
仲間とつながり、役割を果たす喜びを
藤田さんは、アルツハイマー病と診断されたあと、さまざまな活動に取り組むことになる。
「当時、認知症は高齢者の問題と捉えられていて、専門職の人でさえ若年性認知症を理解していませんでした。それで、地元の鳥取で、若年性認知症問題に取り組む会を立ち上げ、認知症本人として発信したのが最初です。私はもともとPTA活動をしていたとき、人権推進部の委員をしていました。人権に関心があったわけではなく、じゃんけんに負けて引き受けたのですが(笑)。そのおかげで人権や差別について考えるようになって。認知症となった今、それを隠すのではなく、本人として発信し、『認知症に対する偏見と誤解をなくすよう世の中を啓蒙していこう』と行動に移すことができたのです」
その頃、全国各地で認知症の人たちが声を上げ始め、世の中に発信する動きが、さざ波のように広がっていた。
「私がインターネットで発信していたら、活動の場と人の輪が広がりました。そんな中、スコットランドには認知症本人たちのワーキンググループがあると知り、自分たちもつくろうと。希望と尊厳をもって暮らすことができる社会をつくり出すという目的に賛同してくださるパートナーさんたちと共に、2014年に『日本認知症本人ワーキンググループ』(JDWG)を立ち上げ、17年に一般社団法人にしました」
18年、藤田さんたちJDWGは「認知症とともに生きる希望宣言」を表明。国の認知症政策において当事者の声を反映する機運が高まった。
日本認知症本人ワーキンググループ(JWDG)【認知症とともに生きる希望宣言】
❶自分自身がとらわれている常識の殻を破り、前を向いて生きていきます
❷自分の力を活かして、大切にしたい暮らしを続け、社会の一員として、楽しみながらチャレンジしていきます
❸私たち本人同士が、出会い、つながり、生きる力をわき立たせ、元気に暮らしていきます
❹自分の思いや希望を伝えながら、味方になってくれる人たちを、身近なまちで見つけ、一緒に歩んでいきます
主婦の友社もプロジェクトに参加します!
「認知症になっても大丈夫」な社会の実現に向けて、主婦の友社も2025年度からプロジェクトに参加。メディアの「伝える力」を活用し、認知症の人や家族、介護者の生の声、企業や自治体による便利な商品や役立つサービスを発信していきます。
【後編に続く】
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取材・文/村瀬素子
※この記事は「ゆうゆう」2025年10月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。
