認知症の「顔が同じに見える」トラブルを解決!思い出を引き出す【3つの工夫】
「認知症はネガティブで偏見に満ちたイメージに支配されています」と話すのは『認知症世界の歩き方』著者の筧裕介さん。そんな思い込みを解消し、認知症に対する理解を深めるための具体例を紹介します。
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お話を伺ったのは
筧 裕介さん
『認知症世界の歩き方』著者、issue+design代表、工学博士
かけい・ゆうすけ●1975年生まれ。
2008年「issue+design」を設立し、社会課題解決のためのデザイン領域の研究、実践に取り組む。
主なプロジェクトに災害時の避難所運営を支える「できますゼッケン」、育児支援の「親子健康手帳」など。
あるあるトラブルにどう寄り添う?「認知症世界を想像して困りごとを解決する」
認知症の人が生きる世界を想像し、ビジュアル化したのが『認知症世界の歩き方』だ。
「ご本人は『なぜ自分はこんなことをするんだろう』と苦しまれています。認知機能のどの部分にどんな障害が起きているのかを知ると、自分の行動の理由が納得できる。周囲も何を工夫すればいいのかが見えてきます」(筧さん)
具体的な工夫を、『認知症世界の歩き方 実践編』をベースに紹介しよう。ただし、たとえば
「食事をしたことを忘れる」のは時間の感覚に狂いが生じて“トキシラズ宮殿”に迷い込んでいるだけとは限らず、満腹感を感じにくい体性感覚のトラブルの可能性もある。ここに示したのはあくまでも一例ととらえ、工夫のヒントにしてほしい。
顔なし族の村
この村に足を踏み入れると、みんな同じ顔に見えたり、見るたびに顔が変わっていたりします。相手の存在を忘れてしまったわけではなく、「人の顔を正しく認識できない」という認知機能のトラブルが原因であることが多いのです。過去の記憶や思い出が失われているとは限りません。
家族の顔がわからない!?
骨折して入院している母。この前お見舞いに行ったら、不思議そうな顔をされた。しばらく話していたらいつもの様子に戻ったけれど、もしかして私のことがわからなかった?
認知症トラブル解消【3つの工夫】
●会話を始めるとき、まず名乗る
「娘の花子だよ」など、自分が何者かを明らかにしましょう。顔写真つきの名札をつけるのも有効。
●よく見える場所に家族写真を飾る
昔の思い出は消えにくい。アルバムや写真をながめることで、幸せな記憶を維持できる可能性が。
●話を合わせながらゆっくり会話する
顔は認識できなくても思い出は残っています。急がずゆっくり会話することで、思い出すことも。
認知症世界の歩き方
ライツ社
認知症の世界を疑似体験。筧さんの著書『認知症世界の歩き方』は、これまでにないビジュアル本だ。
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取材・文/本木頼子
イラスト/稲葉千恵美(オフィスナイス 『認知症世界の歩き方 実践編』より)
※この記事は「ゆうゆう」2025年10月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。
