「こんな商品が欲しかった!」認知症本人の意見が反映された最新グッズとは?【オレンジイノベーション・プロジェクト】
今や1000万人以上が認知症であると推計されています。認知症になっても希望をもって楽しく生きていける社会にしよう!というプロジェクトが始動しています。認知症に対する私たちの意識をアップデートしていきましょう。【後編】
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>> 認知症でも希望を持てる社会へ!認知症の本人が製品・サービスの開発に参画する【オレンジイノベーション・プロジェクト】とは?
お話を伺ったのは
藤田和子さん
日本認知症本人ワーキンググループ 相談役理事
ふじた・かずこ●1961年鳥取県生まれ。元看護師。
45歳のとき若年性アルツハイマー病と診断され、翌年退職。
2017年に仲間とともに日本認知症本人ワーキンググループを設立し、認知症基本法の成立に尽力。
3女を育て、孫2人。現在は夫と2人暮らし。
2020年、オレンジイノベーションが始動
オレンジイノベーションに参加する企業・団体は年々増加。24年度には「オレンジイノベーション・アワード」が開催され、藤田さんは審査員の一人として関わった。
「その製品・サービスが認知症の人にとって使いやすいか、やりたいことの実現につながるかも審査のポイントですが、重要視しているのは開発のプロセス。認知症本人の視点や意見が反映されているかなど、認知症本人と共につくる過程こそが大事なんです」
たとえば、最優秀賞に選ばれた、開け閉めがしやすいファスナー。
「認知症になると、普通のファスナーが使いづらい。どうすれば使えるのかを、認知症本人の意見を聞いて、企業が試作する。それをグループホームの人たちなど多くの認知症本人に使ってもらい、使い心地など率直な意見を聞いて改良を重ね、開発を進めている。その取り組みが評価されたのです」
企業と共につくり出すプロジェクトに参加することで、認知症本人は、自分の経験や知見を生かすことができる。
「認知症の人それぞれに経歴がある。長年主婦だった女性たちは、キッチングッズの開発で盛り上がっていたし、メーカーの営業をしていた人は、家電製品にとても詳しく、その知識をもとにアイデアを出したり。だから皆さん、やりがいがあるんでしょうね。生き生きした表情で、楽しそうに企業の方たちと話し合っていました。企業の人も最初は不安だったようですが、『いろんな視点からアイデアが出て、嬉しい驚きだった』という声が挙がっていました」
企業にとっても、社会貢献だけでなく、認知症の人のニーズに合った製品を作ることは、市場を広げられるメリットがある。双方にとって有意義で、相乗効果のある取り組みといえる。
「このプロジェクトを通して、新しい『認知症観』が広まることが私の願い。認知症になっても、人はどんどん挑戦すべきだし、こんなふうに社会参画ができるんです」
