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88歳【俳優・山本學さん】認知症手前のグレーゾーンと診断→回復。そのカギは運動療法にあった!

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ゆうゆう編集部

「完治はしない」と腹をくくったほうが前向きでいられます

症状のゆるやかな進行を受け入れて生き切る

ただ最近、ゆるやかではあるけれど症状の進行を感じるのだという。

「考えがうまくまとまらなかったり、気がつくと部屋が散らかっていたり。医師は治ったと言うけれど、僕は疑ってるの(笑)。だから完治することはないと腹をくくっています。目をつぶり耳をふさいで病気から逃げるより、そのほうが前向きでいられます。病気の自覚があれば、進行を食い止めるために真剣に取り組むでしょう?」

誰にでもプライドがあるから、認知症を認めることはつらいでしょう、と山本さんは言う。

「でも僕は、病気と向き合えるのは結局、自分しかいないと思っています。つらさや悔しさをかみしめて、悲しいときは泣けばいい。思い切り泣いて、そうして自分にできる努力をするしかないと思うんです」

ひとり暮らしの山本さんは、炊事も洗濯もすべて自分でやっているという。

「できるだけ人に迷惑をかけずに生き切りたいと思っています。だから身の回りのことも、できる間は自分でやるようにしています。ひとり暮らしができなくなったときに入る施設も、お金の管理をどうするかも決めてあります。準備しておかないと、周りの人に迷惑をかけてしまうからね」

まだあと数年は大丈夫かな、と笑う山本さん。穏やかで落ち着いたたたずまいは、認知障害と向き合った末に到達した境地なのかもしれない。ありがとうございましたと席を立ったところで、最後に一言。

「僕ね、認知症のことを話しても治るわけじゃないし、自分で向き合うしかないことだから、あまり話したくないの。これ、書いといてくださいね」

……。まことにあざやかな名優の去り際なのだった。

スマホを使い始めました

知り合いの若者にすすめられてスマホを購入。「彼が全部セッティングすると言っていたのに、海外に行っちゃったんだよ」。で、もっぱら電話として使用。「便利すぎるのはダメ。わからない言葉はスマホじゃなくて辞書を引きます」

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撮影/柴田和宣(主婦の友社)

※この記事は「ゆうゆう」2025年10月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。

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