【ジェーン・スーさん】できないことが増えていく87歳の父と、あえて同居はしない。その理由とは?
感情を使わずビジネスライクに
自分の生活を変えずに父を支えるにはどうしたらいいのか。スーさんはその答えを介護本ではなくビジネス書に求めた。
「父のサポートを始めた当初は、老いていく親を見て気持ちがふさいだり、何でできないのかとイライラしたり、いろいろな感情に襲われました。でも感情で動いていては自分の心ももちませんし、父との衝突も生まれます。それを回避するには、仕事だと思うのが一番だと思ったんです」
ビジネス書を参考に、介護未満の父を支えるプロジェクトのためのノートを作った。父が「できること」「できないこと」「危ういこと」「頼みたいこと」を書き出し、「できないこと」「頼みたいこと」を誰に振るかを考えていく。これで仕事として淡々と進められる。
「ただ、失敗もありました。当時、私はどこかで父を教育しようと思っていたんですね。栄養についてレクチャーし、だからこれとこれを食べろとか。痩せていく父を何とかしたかったのですが、父には『刑務所みたい』と言われてしまいました」
父の人生ができるだけトラブルが少なく好きなように生きられることがゴール
スーさんは考えを改めた。
「父の人生は父の人生。間違える自由もあるし、どう見ても不正解だと思うほうを選ぶ権利もある。父を健康にしようと息巻いていたのですが、それは私自身の満足であり、私にとっての安心だったわけです」
ノートを開き、一番上にプロジェクトのゴールを記した。
―父が精神的・肉体的に健やかなひとり暮らしを一日でも長く続ける―
そのゴールに向けて、「快適な居住空間の維持」「健康的な食生活」「体力づくり」と枝葉を伸ばし、さらに具体的な行動に落とし込んでいく。
「主人公はあくまで父。父がトラブル少なく、好きなように生きられることがゴールだと考えをシフトしてからは、父との関係も穏やかになりました」
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撮影/佐山裕子(主婦の友社) 取材・文/志村美史子
※この記事は「ゆうゆう」2025年12月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。
