まさかのおまえが恋愛展開なのかい!と思わずツッコミながら笑った【ばけばけ】9週[写真多数]
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田幸和歌子
まさかのおまえが恋愛展開なのかい!
ある日、トキはリヨに誘われ八重垣神社を訪れる。リヨの目的は、水占いでヘブンとの恋愛の行方をはかることだ。リヨの恋愛は成就するのか。リヨのためには異人であるヘブンと結ばれるためにできるだけ遠くで沈め、いっぽう錦織の願いのためには近くで沈め。「沈んで!」と叫ぶリヨの隣で(沈むな!)と心の中で叫ぶトキ。板挟みのトキの心中はここでも騒がしく忙しく、思わず笑ってしまう。
そこにさらに笑いを足してきたのが、トキの祖父、まさかの〝ラストサムライ〟勘右衛門(小日向文世)である。トキが板挟みの中で沈め、沈むなと心の中で葛藤しているところに、
「沈め! 沈んじょくれ!」
という聞き覚えある声。まさかのおまえが恋愛展開なのかい!と思わずツッコミながら笑ってしまう。勘右衛門は現在「スキップ指導」をしている子供たちのひとりの祖母に恋心を抱いているらしい。しかしそのように次から次へと笑いをちりばめてきながらもストーリーに破綻をきたさないところには緻密さを感じられる。
さまざまな〝外野〟の思いがありながらもリヨとヘブンの関係は少し進展(?)、二人で神社を含めた松江の名所を「ランデブー」する展開となる。ヘブンのためにお弁当を作ってあげたいからとヘブンの好物をトキに聞きにきたところで、錦織が割って入り「糸こんにゃくです!」と言う。これまで何度か食卓にのぼっては、「ムシ! ジゴク!」と悪態をつかれ、前週のヘブンをもっと知るためのクイズの問題にもなっていた食材だ。トキはといえば、「明日は天気もええですし、うってつけだと思います」と、棒読みのようにただ繰り返すばかりだった……。
当日、板挟みのトキは、『ベントウアケルナ イトコンニヤク』の紙を渡して〝悲劇〟を食い止めようと、トキなりの抵抗をこころみる。錦織と知事はふたりを尾行するが、それはヘブンにバレており、4人での〝ランデブー〟となってしまう。そんなヘブンは、神社での石狐に心を奪われ夢中になりリヨのことはそっちのけ、4人でのランデブーに加えてこの仕打ち、今のところヘブンの気持ちはその程度であることがわかる。そもそもヘブンが大切に思っているのは、写真を大切に飾っているかつての同僚イライザ(シャーロット・ケイト・フォックス)だろう。結局リヨはむくれて帰ってしまうのだった。
トキがいなくなったかと取り乱したあとで勘違いとわかると安堵の表情をうかべるヘブンに、まだ恋愛感情ではないが少しずつ距離が縮まっていることがわかる。
さて、リヨがウグイスだといってヘブンにプレゼントした鳥は、なかなか「ホーホケキョ」と鳴かない。なぜなのか。花田旅館では主人の平太(生瀬勝久)とツル(池谷のぶえ)の間で論争がヘブンも巻き込んで勃発、そこに現れた新聞記者の梶谷(岩崎う大)によって、これはウグイスでなくメジロ、「ホーホケキョ」と鳴かないのは当たり前とあっさり解決してしまう。
このどこか落語の小咄のようなウグイスとメジロの勘違い論争も、ある意味リヨの気持ちの届かない感じを表していたようにも感じられ、もしそうであるならやはり笑いで包んでいくことの上手い演出だ。
そして、悩まされた板挟みから解放されたトキは、思わず自然とスキップし、うまくできてしまう。
タッタタッタ……スキップのリズムも心地よく、スキップとウグイスの週の混乱は幕を閉じていく。
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