【ばけばけ】ほほえましさとじれったさ。少しずつ心の距離が近づき、あとは互いに抱える気持ちが何であるかを気づくだけ!
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田幸和歌子
恋愛ドラマとしての匙加減のよさにも注目!
「ネガイマス! ネガイ! ネガイ!」
本を見せるのではなく、トキの口から聞かせろと言う。
薄暗いろうそくの光のもと、トキの怪談語りが始まる。
「モウイッペン!」
何度もせがむヘブンの純粋な喜びは、見ているこちら以上にトキにとっては嬉しいことであろう。ヘブンに対するトキの思いの変化が、少しずつ描かれてきているだけに、ここでさらにグッとヘブンの気持ちを掴めたのは大きすぎる前進だという気がする。実際に、スキップで帰宅し、布団を抱きしめて喜びをあふれかえらせているトキの姿は、一度結婚を経験しているもののとてもピュアでほほえましく映る。
余談的ではあるが、怪談を何度もせがまれ帰宅が遅くなっているトキを心配する松野家の面々の姿もまた、このドラマらしいコミカルさであり、その挟み込み方も絶妙なバランスである。
我々は当然ふたりがこの先どうなっていくかは知っている。大雄寺での墓を目にし、
「ハカ、スバラシ……」
「墓って寂しくていいですよね……」
こんなふうに、お墓に魅力を感じるやりとりが成立する、そんな描写ひとつとっても、ふたりの相性のよさは伝わってくる。
怪談語りを通じて、次第に自分の身の上を語るようになったりすることで、ヘブンが来日以来ずっと心のどこかに抱えていたであろう「孤独」が少しづつ薄らいでいるように感じられる。それは言うまでもなく怪談でなく、トキという女性の存在であることが分かるのは、この作品の脚本と演出の丁寧さが届けてくれるものなのであろう。
少しずつ心の距離が近づき、あとは互いに抱える気持ちが何であるかを気づくだけ……といったところのようでありながら、そこには大きな宿命も含まれている。ヘブンの〝ラストピース〟が埋まること、それはヘブンの日本での役目が終了することと同義でもある。それを、「タダノトオリスガリ」発言でうっすら傷ついて以降、ヘブンと距離を置いている錦織から指摘されるというのもうまいつくりである。
まだはっきりとその気持ちに気づいていないけれど、はじめから定められた運命が大きな壁として立ちふさがる。二人はその壁をどう超えていくのか。『ばけばけ』は、怪談を残したひとのドラマというばかりでなく、ほほえましさとじれったさをあわせもつ恋愛ドラマとしての匙加減のよさも注目すべきポイントではないだろうか。
二人それぞれの思いばかりでなく、ヘブンにとってはかつての妻の存在が、そして、今週ラストで届いた、トキのかつての夫・銀二郎からの手紙が、それぞれをかき回してきそうな空気で幕を閉じていった。
次回予告で、阿佐ヶ谷姉妹が担当し、ふたりの行く末を見守る〝蛇と蛙〟による語りも、野次馬的にこの四角関係となりそうな展開を盛り上げていた。
ラブストーリー・ばけばけ、蛇と蛙と同じように、その恋模様がどう転がるか、楽しみにしたい。
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