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【ばけばけ】行間大爆発!屈指の名場面に震える前半折り返し。あまりにも精錬で美しい、見事な気持ちの通じ合い

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田幸和歌子

ドラマとして饒舌にしない魅力が濃密に

トキとヘブンだけでなく、銀二郎、イライザにもそれぞれの思いがある。トキが銀二郎の「やり直し」を受け入れたら、そしてヘブンがずっと言い続けている〝ラストピース〟が埋まることもまた、トキとヘブンの現時点での〝気付かぬ純愛〟は終わりを告げることとなる。

そんな4人の織りなす思いが大仰でなく、静かなトーンで光に照らされる宍道湖をはじめとした松江の美しい景色とともに描かれていく演出がまた、このドラマの恋愛ドラマとしてのせつなさときらめきを存分に届けてくれる。

「やり直そう。東京で一緒に暮らそう」
宍道湖のほとりで「告白」する銀二郎。なんとも美しい告白シーンである。

しかし、それ以上、それ以降の二人の最終的なやりとりは描かれていない。そしてまた、ヘブンとイライザもまた、同じである。

橋の上で立ち止まり頬を伝う涙を笑顔を浮かべながら拭うトキ。その姿を花田旅館から見つめる銀二郎。そして、そんな銀二郎に、「私とあなた、一緒ね」と言うイライザ……

【ばけばけ】行間大爆発!屈指の名場面に震える前半折り返し。あまりにも精錬で美しい、見事な気持ちの通じ合い(画像7)

「ばけばけ」第64回より(C)NHK

【ばけばけ】行間大爆発!屈指の名場面に震える前半折り返し。あまりにも精錬で美しい、見事な気持ちの通じ合い(画像8)

「ばけばけ」第64回より(C)NHK

4人がどうなったかを、視聴者は「行間」から読み解き、理解する。ある種の奥ゆかしさ、ドラマとして饒舌にしない魅力が濃密に詰め込まれている。

銀二郎は、再び松野家で頭を下げ、トキを愛している。だからこそ、幸せになってほしい。「だけん、諦めます」と言った。しかし、そこに「もう逃がさんぞ」という勘右衛門の台詞でやはりちょっと笑いを入れてくるところも徹底した見事な照れ隠しのバランス感覚だ。

それぞれの「別れ」を通過し、寂しさや悲しさを抱えながら再会したヘブンとトキ。

「サンポ……イッテキマス」
寂しげな背中を見せ橋を渡っていくヘブンを引き留め、
「私も……ご一緒してええですか?」
笑顔で言うトキ。
「……はい」
一言だけ答える。同意というよりもこの返事は受け入れであろう。

そして、このクライマックスでハンバートハンバートが歌う主題歌「笑ったり転んだり」が流れ、作品タイトルが流される。
この第13週のサブタイトルは、「サンポ、シマショウカ。」である。そう、「笑ったり転んだり」の歌詞そのままである。

歌が終わり、「サンポ」する二人がたどり着いた夕日に照らされた宍道湖のほとり。そこに立った二人は何も言わず、手をつなぐ。主題歌以降、台詞は一切ない。夕日の中、強い影が落とされた二人の表情も判明しない。しかし、二人の気持ちがここでとうとう通じ合ったことは、はっきりとわかる。行間大爆発、あまりにも精錬で美しい、見事な気持ちの通じ合いである。

屈指の名場面とともに、前半を折り返した本作品は、年を超えていよいよ二人が本格的に力を合わせていくさまが描かれていくことになるだろう。やはり、なにげない日常が静かに積み重ねられながら。

【ばけばけ】行間大爆発!屈指の名場面に震える前半折り返し。あまりにも精錬で美しい、見事な気持ちの通じ合い(画像9)

「ばけばけ」第65回より(C)NHK

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