介護をしていて「感謝されたい」と思ったこと、ありませんか?【禅僧・枡野俊明さん】が説く、見返りを求めない幸せ
今回は、「母に仕送りしていますが、報われません」という相談です。親の介護をする人が多いこの時代、真の親孝行とはどういうことなのか、枡野さんが語ります。
門を開けば
「開門福寿多(門を開けば福寿多し)」
自ら門を開くことで福を招き入れようという禅の言葉です。
「感謝の言葉を期待することを、やめてしまいませんか」という枡野さん。その真意は?
<今月のテーマ>
「母に仕送りしていますが…報われません」
遠距離に住む母の介護をしています。お金がないと言うので、毎月3万円ほど送っていますが、お礼の言葉もありません。わが家の経済状況もひっ迫していて余裕があるわけではないので、むなしく感じてしまいます。
言葉にしなくても親は感謝しているはず
苦しい生活の中でも、お母さまに毎月仕送りしているのですね。しかも遠距離介護ですから、帰省するには交通費もかかることでしょう。お母さまの要介護度がどの程度なのかは書かれていませんが、実家では食事の用意をしたり、病院に連れて行ったりもするでしょうから、毎月の仕送り以上にお金がかかっているはずです。それを何年も続けている……なかなかできることではありませんし、本当にすばらしいことだと思います。
お母さまからはお礼の言葉もないと書かれていますが、心の中では深く感謝していることでしょう。それでもわが子には、なかなか素直に感謝の言葉を伝えられない人もいます。お母さまもそういう方なのかもしれません。あるいは認知機能が低下して、娘が仕送りしてくれていることの意味を理解できないのかもしれません。認知症とは診断されていなくても、その予備軍のような状態である可能性もあります。いずれにせよ、私からのアドバイスはひとつだけ。お母さまからの感謝の言葉を期待することを、やめてしまいませんか。
禅には「自然(じねん)に春意あり」という言葉があります。春になれば風は暖かくなり、日の光はまばゆさを増し、花々のつぼみはふくらみ始めます。自然はあれこれと考えたり、期待したりしません。だからこそ人々は春の美しさに純粋さを感じ、感動をおぼえるのです。
相談者さんの場合も同じだと思います。ご自身の生活がけっしてラクではない中で、コツコツとやりくりしながらお金を工面し、お母さまに送金しているのです。なんと純粋で美しい行為だろうと感動します。見返りを求めないからこそ美しいのです。
