記事ランキング マンガ 連載・特集

【笠井信輔さん】フジテレビから独立直後にがんが発覚。その時、黒柳徹子さんからかけられた言葉とは?[ターニングポイント#3]

公開日

更新日

藤岡眞澄

インスタグラムのフォロワーが300人から一気に30万人に!

——告知から1カ月後の12月19日、古巣でもある『とくダネ!』に生出演して、病状と心境を語った当日に入院しています。

実は、なるべく早く入院して抗がん剤治療を始めたほうが良い、と勧められていたんです。そのころは尿漏れに悩まされたり、全身に耐えられないほどの痛みが広がって鎮痛剤が手放せなくなっていましたから。

でも、“辞めアナ特需”というのがあって、他局からもたくさん仕事のオファーをいただいていたんです。

ただ、2週間後にずっと夢だった『徹子の部屋』(テレビ朝日系)の収録が決まっていました。「どうしても出たい!」と、入院を2週間待ってもらいました。「『徹子の部屋』だけ特別扱いはできない」とマネージャーに言われ、入院までの2週間、体の痛みと闘いながら、どの仕事もお断りせずにやり遂げようと覚悟を決めました。

実際、徹子さんが収録終わりにかけてくださった「元気になったらまたいらっしゃいね」という言葉は、病気を乗り越える大きな励みになりましたね。その結果、11カ月後に「完全寛解」した僕を再び番組に呼んでくださったのですから、感激です。

——入院4日目には『笠井TIMES~人生プラマイゼロがちょうどいい~』というブログを開設しています。きっかけは何でしたか?

誤解を恐れずに言えば、死んでいく姿を記録すれば価値が出る、と思ったんです。僕はテレビマンですからね。ワイドショーってそういうもの、ニュースってそういうものなんです。

実は、入院の少し前から始めたインスタグラムのフォロワーが300人しかいなかったのに、がんを告白したら一気に30万人になりました。皆さんがどれだけがんに関心を持っているか、ということですよね。

病室から発信するブログのコメント欄にも、「私もがんです」「家族ががんです」「笠井さんを追いかけてがんばります」という人がどんどん増えていきました。

——膨大なコメントのすべてに目を通していたそうですね。

これはもう、自分一人の命じゃないなと思いました。最後まで続けなくてはいけない。「帰ってきました、大丈夫です、ステージⅣでもがんばります」っていうことを見せるのが使命だと思えたのが、がんとしっかり向き合えるようになったターニング・ポイントだと思っています。

それは紛れもなく、名前も知らないSNSフォロワーの皆さんのおかげです。

——ブログでは抗がん剤の副作用に耐える辛そうな姿もさらされています。一方で、節分に鬼の仮装をしたり、ウィッグ選びでファッションショーをしてみたり……

カッコつけずに素直に伝えよう、と心に決めたんです。

これこそ、がん当事者にしかできないこと。長年、「伝え手」として生きて来た自分に巡ってきたチャンスだと受け止めました。

——チャンス、ですか?

がんになってよかったとは思わないけれど、がんになったことはマイナスだけじゃない。プラスになったこともあるんです。

たとえば、子どもたちとこんなにもたくさんの時間を一緒に過ごせるなんて、がんになったからこその出来事です。

入院中、三男が僕の母に作り方を習いに行った卵焼きを差し入れてくれたときは、抱きしめたいくらい感動しました。それがきっかけで三男は料理をするようになって、今では妻が仕事に出かけていると、「僕が昼ごはんを作る」とキッチンに立ってくれています。

次男も風呂掃除や食器洗いなど、家事を率先してやってくれました。

そして、感謝してもしきれないのは、妻ですね。がん告知を受けて、死さえ覚悟して気弱になりがちな僕を、涙を見せずに笑顔で励まし続けてくれました。

入院中もお正月にはミニおせちと祝箸、節分には福豆や恵方巻、ひな祭りには菱餅やひなあられを持ってきてくれて、家族が集まった病室がいつもの“笠井家”になるのが何よりうれしかった。

僕が病気になったことで家族の想いが一つになって、「ワンチーム」になってきているのかな、という実感がありました。

笠井信輔さん Profile

かさいしんすけ●フリーアナウンサー
1963年、東京都生まれ。早稲田大学を卒業後、アナウンサーとしてフジテレビに入社。「とくダネ!」など、おもに情報番組で活躍。2019年10月、フリーアナウンサーに転身。直後、ステージ4の悪性リンパ腫に罹患していることが発覚。12月より入院。ブログで闘病の様子を綴った。2020年6月に完全寛解し、その後仕事に復帰。著書に『僕はしゃべるためにここ(被災地)へ来た』(産経新聞出版)(新潮文庫)、『生きる力~引き算の縁と足し算の縁~』(KADOKAWA)など。

笠井信輔さんのターニングポイント③
がんを告白したら、インスタグラムのフォロワーが一気に30万人に。これはもう、自分一人の命じゃない、最後まで続けなくてはいけない。名前も知らないSNSフォロワーの皆さんのおかげで、がんとしっかり向き合えるようになりました。

撮影/橋本哲

▼次回は、笠井さんの現在、そしてこれからのことを伺います。▼

▼あわせて読みたい▼

>>フジテレビではなくTBSのアナウンサーになっていたかも!?【笠井信輔さんのターニングポイント#1】 >>顔面麻痺の症状に苦しみ「もう表に出られないかも」と悩んだ日々。病を経て思った「大事にすべきこと」【寺島しのぶさんのターニングポイント#2】 >>私の「元上司・高市早苗総理」についてお話しします【金子恵美さんのターニングポイント#3】
画面トップへ移動