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【言葉の力】禅僧 枡野俊明さんが教える、正しい言葉の選び方

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ゆうゆう編集部

言葉を選ぶことの大切さがよくわかります。
「慈しみの心から生まれる愛情のこもった言葉」をかけることができたなら、それは相手にとってだけでなく、自分自身にとってもうれしいことですね。

しかし、自分に余裕がなければ、愛情のこもった言葉は口から出てこないように思います。余裕がないとき——たとえば怒りに満ちたとき、悔しい気持ちでいっぱいになっているときは、どうしたらいいのでしょう。
書籍から、禅の考え方を教えていただきます。

怒りが湧いたときこそ「ありがとさん」

言葉を発するうえで特に注意したいのは、怒りの感情が芽生えたときです。禅の戒めのひとつに「不瞋恚戒」があります。これは、「怒りに燃えて自らを見失うことはしません」というものです。

カーッとなると、人はどうしても言葉がエスカレートしがちです。相手の気持ちを思いやることなく、激しい言葉で相手を傷つけてしまうこともあります。感情を暴走させた自分に対して情けなく感じることもあるでしょう。

禅では、「怒りを頭に持ち上げず、腹にとどめよ」と教えています。「頭に血が上る」という言葉があるように、怒りは体の中を駆けあがってくるものなのです。呼吸は短くなり、ハッハッと胸で息をしがちです。そうなったら何か言葉を発する前に、とにかく深呼吸しましょう。

まずは姿勢を正します。そしていったん深く息を吐き、吸い込んだ息を丹田(へその下指4本分)に落とすようにして息を吸います。これを3回ほど繰り返すうちに、気持ちが静まって感情が整ってくるはずです。

2020年に他界された、私の尊敬する板橋興宗(いたばしこうしゅう)禅師は、呼吸を整えたあとに心の中で「ありがとさん、ありがとさん、ありがとさん」と3回となえ、心を落ち着けるとおっしゃっていました。曹洞宗大本山總持寺の貫首まで務められた人徳者であっても、ときには怒りが湧くのだと伺い、以来私も見習っています。

心でとなえる言葉はなんでもいいのです。「大丈夫」とか「気にしない」とか。そして冷静に、穏やかに、相手の心に届く言葉を探して気持ちを伝えましょう。

<一禅チャレンジ>
ポジティブ言葉に変換する

日頃、何気なく使っている言葉を見直してみましょう。たとえば 周囲の人が失敗したときに、「何やってるの?」「ダメね」などと言うのではなく、「大丈夫だよ」「どうすればうまくいくかな」と、失敗が次のステップにつながるような言い方を心がけましょう。
人の個性も、言い方ひとつでネガティブにもポジティブにもなる ものです。「無口で暗い人」ではなく「思慮深くて繊細な人」。「気が強い」ではなく「自分の意見をしっかり持っている人」。光の当て方によって、よい部分が照らし出されることもあれば、マイナスな印象を与えることもあります。できるだけよい面を伝えられる人でありたいものです。

※この記事は『悩みを手放す21の方法』枡野俊明著(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。

悩みを手放す21の方法

枡野俊明著
主婦の友社刊

戸惑ったりイライラしたりの毎日、そんな心を支えてくれるのが「禅」の考え方です。禅というと、坐禅を組むことが思い浮かびますが、禅では生活そのものが修行なのです。歩く、立ち止まる、座る、横になる。そんな日常の立ち居振る舞いすべてが修行になります。この本では、生活の中に禅的なものを取り入れる21の行動(形)を、禅僧である枡野俊明さんが自ら手本を示しながら教えます。まずは呼吸する、立つ、座るといった「形」を整えることから。そして、食事や生活習慣などの行動、コミュニケーションについて。内面(心)を整えるためには、まず形(行動)から入るのです。行動から入れば、心はあとからついてきます。大切なのは、頭で考えたり悩んだりする前に「行動する」こと。この本を読み終える頃には、禅的生活がきっと身についているはずです。困ったり怒りが湧いてきたら、丹田を意識して、息を吐くこと。それも立派な「禅的生活」です。

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