私らしく生きる 50代からの大人世代へ

人気記事ランキング 連載・特集

【中野翠のCINEMAコラム】ウクライナ、ポーランド、ユダヤ、 戦争に翻弄される 3家族の運命やいかに?!『キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩』

公開日

更新日

中野翠

ユニークな視点と粋な文章でまとめる名コラムニスト、中野翠さんが、おすすめ映画について語ります。この映画の舞台は第二次世界大戦下のウクライナ。ポーランド人とユダヤ人が迫害を受けていた当時、ユダヤ、ウクライナ、ポーランドにルーツを持つ3家族が、戦争によって翻弄されるさまを描いたもの。監督のオレシア・モルグレッツ=イサイェンコが、ウクライナ生まれの女性というところも興味深い作品です。

以前だったら、ウクライナと言われても東欧のどのへんにあるのか、どんな国なのか、パッと頭には浮かばなかったのだが……今では世界中の注目を浴びるようになった。

大国ロシアに抵抗する小国ウクライナ。大統領のゼレンスキー氏は、もとコメディアン。さすがに人間味たっぷりのうえ、クールな決断力も持ち合わせている。「冷血」という言葉がピッタリのプーチン氏とは大違い。

さて、この『キャロル・オブ・ザ・ベル』は、第二次世界大戦下のウクライナを舞台にしたもの。ロシア(当時はソ連)とナチス・ドイツの侵攻を受け、ポーランド人とユダヤ人は迫害された。

そんな中、ユダヤ人の一家が住んでいたビルに、ウクライナ人の一家とポーランド人の一家が引っ越して来る。ユダヤ、ウクライナ、ポーランドにルーツを持つ3家族は、偏見や差別もなくおだやかに暮らしていたのも、つかのま。戦況は悪化。ソ連軍に支配されることになる。3家族の運命は、いかに?!――という話。

なるほどなあ、他国と海をへだてた島国の日本とは大違い。ヨーロッパでは、たやすく他国を侵略できるのだ。自分が生まれ育った国を他国に侵略されるという、心の痛み……。

そんな感慨にふけりつつも、半世紀以上前のディープなヨーロッパの街並やインテリアやファッションに目がクギヅケ。質素であっても、安っぽさは無い。アンティック・ショップに迷い込んだような気分にひたれる。

フザケた気持で書くわけではないが、ドイツのナチスほど映画の世界に貢献したものは無いだろう……と思ってしまう。映画界はユダヤ系の人が多いせいもあるだろうが、実際、ナチス絡みの映画は多く、なおかつ、快作が多いのだ。

この映画のオレシア・モルグレッツ=イサイェンコ監督は女の人。1984年、ウクライナ生まれ。キーウに住んでいて、「ロシア軍のミサイル攻撃があり、ウクライナ国内で安全な場所はどこにもありません」と語っている。

『キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩(うた)』

監督/オレシア・モルグレッツ=イサイェンコ
出演/ヤナ・コロリョーヴァ、アンドリー・モストレーンコ、ヨアンナ・オポズダ、ポリナ・グロモヴァ、フルィスティーナ・オレヒヴナ・ウシーツカ 他

7月7日より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺 他 全国公開(ウクライナ、ポーランド 配給/彩プロ)

© MINISTRY OF CULTURE AND INFORMATION POLICY OF UKRAINE, 2020 – STEWOPOL SP.Z.O.O., 2020

※この記事は「ゆうゆう」2023年8月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。

ゆうゆう2023年8月号

年々厳しくなる夏の暑さ。食欲や体力が落ち、引きこもりがち……、という方も多いのでは。そこで今月の『ゆうゆう』8月号は「疲れ知らずで夏を乗り切る」を大特集。いつも元気な女優・柴田理恵さんやスープ作家・有賀薫さんの夏の過ごし方は必見です。他にも、夏を乗り切る温活のポイントや、涼しく過ごす暮らしの整え方と、内容盛りだくさん! この特集を味方に厳しい日本の夏を迎え撃ってください。

詳細はこちら

PICK UP 編集部ピックアップ