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【中野翠のCINEMAコラム】今さらだけど、こんな医師・先生に会いたかった!『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』

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中野翠

ユニークな視点と粋な文章でまとめる名コラムニスト・中野翠さんが、おすすめ映画について語ります。今回はモンテッソーリ教育の生みの親、マリア・モンテッソーリの劇的な人生を描く『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』です。

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今さらだけど、こんな医師・先生に会いたかった

20世紀初頭といえば、日本では明治時代の後半––––。100年以上前の話ということになる。当然、「男女平等」などという考えはなく、女性の職業も限定されていた。

そんな時代の中でも、イタリアのローマでは、初の女性医師が活躍していた。未婚の母でもあったその医師の名はマリア・モンテッソーリ。当然のごとく「女のクセに……」という逆風は、あっただろう。たぶん、男ばかりではなく女たちからも……。それでも、くじけることなく、1907年には「子どもの家」を開設し、多くの女の人たちを救った。

この映画『マリア・モンテッソーリ』では、画期的な独自の教育法をつらぬくマリアと、それを支援する元・高級娼婦の活躍ぶりを描いたもの。当時では珍しかったであろう、超インテリの女性医師と娼婦がタッグを組んで、男性中心社会に風穴をあけたのだった。

私は知らなかったが、マリア・モンテッソーリの教育思想は、今や多くの有名人にも支持されているのだった。将棋の藤井聡太やシンガー・ソングライターのテイラー・スウィフト、アマゾン創業者のジェフ・ベゾスなど。

どうやら、モンテッソーリの教育のおおもとは、「子どもには自らを育てる力が潜んでいる」「それを邪魔せず、援助することが大切……」ということなのだろう。

私は落ち着きのない子どもで、勉強自体はそこそこ出来たものの、授業態度が悪かったのだろう、先生には、たびたび注意された。今さらながらだけれど、モンテッソーリ式のお医者さんや先生に出会いたかった?!

医師として働くモンテッソーリのファッションも見もの。衿を詰めたブラウスに手芸的なジャケット、そして、くるぶしまでの長いスカート……。できるだけ肌を見せず、活発な行動はしにくいファッション。一日だけだったら着てみたいが……。

マリア・モンテッソーリのユニークな教育を受ける子どもたちもかわいい。幼くても、すでにして個性というものがあるのが、ほほえましい。

マリア・モンテッソーリは1952年に81歳で亡くなった。堂々たる人生––––。

『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』

監督/レア・トドロフ 
出演/ジャスミン・トリンカ、レイラ・ベクティ、ラファエル・ソンヌヴィル=キャビー 他 
3月28日よりシネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋、UPLINK吉祥寺 他 全国順次公開
(フランス、イタリア 配給/オンリー・ハーツ)
©Geko Films – Tempesta - 2023

※この記事は「ゆうゆう」2025年4月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。

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