50代からの年金の増やし方【中編】プロが伝授する「繰り下げ受給」の方法とは?
年金が思ったより少ない。私の老後はどうなるんだろう……と、不安を抱いている大人世代の方は少なくないはず。前回は、厚生年金に加入する方法を伺いました。今回はもうひとつの年金の増やし方について、ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんに教えていただきましょう。
▼他にも年金の増やし方▼
50代からでも間に合う!年金額を増やす方法【前編】ポイントは「厚生年金への加入」
【大人世代Aさんの悩み】
私の年金を増やす方法はありますか。
いま50代でパート勤務(厚生年金未加入)で、将来の年金は5万円しかありません。
【井戸さんのアドバイス】
年金を繰り下げ受給すると、年金額を大きく増やせます。
65歳まで働いて、70歳から年金を受け取ると、年金額は2倍にアップも可能!
繰り下げ受給で年金が増やせる!
「老後の年金が少なくて不安」という人は、とても多いものです。でも、50代からしっかり対策をとれば、年金を増やすことは可能です。
前回は、厚生年金に入って働くことで、年金額が増やす方法をお話しました。今回は、年金を増やすもう一つの方法「繰り下げ受給」について説明しましょう。
公的年金は原則65歳から受け取れますが、希望すれば、受給開始の時期を66歳以降に変更することができます。これを年金の「繰り下げ受給」といいます。
繰り下げられる期間は、66歳以降75歳まで。この期間であれば1カ月単位で繰り下げることができ、1カ月繰り下げるごとに受給額が0.7%アップします。
たとえば、5年繰り下げて70歳から受けとると、65歳から受けとるより、年金額は42%増額に。上限の75歳まで繰り下げると、84%増やせます。ご質問者の場合も、もともと5万円の年金が70歳から受けとると7万1000円に、75歳からに受けとると9万2000円まで増やせることに。増額された年金額は一生涯続くので、長生きするほど繰り下げ受給の効果は大きくなるといえるでしょう。
繰り下げ増額率早見表
年金の繰下げ受給|日本年金機構 (nenkin.go.jp)より
【計算例】
たとえば、年金額80万円の人が68歳6カ月で受け取る場合、増額率は29.4%。
80万円×1.294=103万5200円にアップ!
自分や家族にベストの受取り方を考えて
繰り下げ受給は、年金額を大きく増やすのにとても有効な手段です。ただ、仮に年金受給を70歳まで繰り下げると、70歳で年金が出るまでの生活費の不安が残るのも確か。将来受けとれる年金がいくら増えても、生活費が不足して大事な貯蓄をどんどん使って減らしてしまっては元も子もありません。
繰り下げを利用するなら、その間はなんらかのかたちで収入があることが必須条件です。繰り下げ受給の上手な使い方として、2つのテクニックを紹介しましょう。
年金の繰り下げ受給は、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」、どちらかだけを繰り下げることができます。そこで、一つめのテクニックは、たとえば、65歳から5年間は働きながら厚生年金だけを受給し、基礎年金は70歳からに繰り下げる方法です。65歳以降は働くにしても収入は現役時代より減りがちですが、この方法なら、収入だけでは不足する生活費を老齢厚生年金でカバーしつつ、老齢基礎年金を確実に増やしていけます。
もう一つのテクニックは、夫婦で暮らしている場合、どちらか一方だけが年金を繰り下げる方法です。たとえば、夫が65歳から年金を受給して生活費にあてながら、妻のみ年金を繰り下げ受給すれば、70歳以降の世帯年収を増やせるだけでなく、男性より平均寿命が長い女性(妻)が自分の年金を増やしておけます。65~70歳まで夫の年金だけでは生活費が足りない場合は、夫婦で短時間でも働くことも検討してもいいでしょう。
夫婦でどの年金をいつから受けとるのがいいかは、それぞれの家計の事情によって違います。さまざまな受取り方法をシミュレーションして、わが家に適した方法を探してください。