年金受給は70歳からがベスト?!【後編】プロが解説するお得な年金との向き合い方
年金が思ったより少ない。私の老後はどうなるんだろう……と、不安を抱いている大人世代の方は少なくないはず。前回は、繰り下げ受給で年金を増やす方法について解説しました。今回は、繰り下げ受給で気をつけることを、ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんに教えていただきます。
▼年金受給の別ケース▼
50代からの年金の増やし方【中編】プロが伝授する「繰り下げ受給」の方法とは?
【大人世代Aさんの悩み】
50代でパート勤務、将来の年金が5万円しかありません(厚生年金未加入)。
繰り下げ受給で増やす場合、後に延ばすほどおトクになりますか。
【井戸さんのアドバイス】
・繰り下げ受給の年齢は、生涯にもらえる年金総額も考慮して決めましょう。
・夫より年下の場合は、加給年金がどうなるか必ずチェックを。
生涯の年金総額は、70歳からの受給が一番おトク!?
年金の繰り下げ受給は、66歳以降、1カ月単位で受給開始が決められる自由度の高い制度です。
繰り下げ待機中に事情が変わってお金が必要になれば、いつでもペナルティなしでやめてOK。たとえば、「70歳で受けとるつもりだったけど、体調を崩して働けなくなったので早く受け取りたい」といった場合も、年金事務所に「支給繰り下げ請求書」を提出すれば、翌月分から受給できます。
また、まとまったお金が必要な場合は、未支給金(65歳から受給していた場合に受け取れた年金)として、その時点までの年金をまとめて受けとることも可能です(割増はありません)。
とりあえず66歳まで1年間繰り下げてみて、以降は、1カ月ごとにそのときどきの収入や家計の状況などを見ながらどうするか決めていってもいいでしょう。
ちなみに、繰り下げ待機中に亡くなった場合も、遺族が未支給年金を受けとれるので、まったく受け取れないということはありません。
ただし、繰り下げ受給には、注意したい点が2つあります。
一つは、受給開始年齢が遅くなるほど、当然、年金の受け取り期間が短くなる点です。つまり、毎年の年金額は増やせても、長生きしないと、生涯で受けとる年金総額ではソンする可能性もあるということ。
たとえば、70歳で受給をスタートした人が、65歳から年金を受給した場合の年金総額を超えるのは81歳11カ月以降。さらに、最長の75歳から受給した場合は、86歳11カ月以降にならないと、65歳から受給した場合の年金総額を超えられません。
日本人の平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳(令和4年)ですから、75歳からの年金受給でトクをするには、少なくとも平均年齢以上に長生きする必要があるといえるでしょう。
将来のことは誰にもわかりませんが、いつ受けとるのが一番おトクか、ヒントになるのが厚生労働省の「簡易保険表」です。それによると、これから順次65歳を迎える年代の男性約4割、女性約7割近くが90歳まで生きると予想されています。仮に90歳まで年金をもらい続けたとすると、75歳から84%増しで年金を受けとるより、70歳から42%増しで受け取った方が生涯で受けとる年金総額は多くなります。
よほど長生きする自信がない限り、70歳繰り下げ受給がもっともおトクと考えられそうです。