中村獅童さんが語る「歌舞伎者だもん、アナーキーな気持ちをもっていないとね」
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ゆうゆう編集部
歌舞伎界に新しい風を吹き込むべく活動を続ける中村獅童さん。昨年50歳を迎えて中堅となってきた今、取り組みたいこと、切り開いていきたいことがますます増えてきたそう。そのエネルギーの源はどこにあるのか、お話を伺いました。
初音ミクさんのファンが歌舞伎座に連れてきてくれた
近年、次々と新たな挑戦を続ける歌舞伎界。それを率先して牽引するひとりが、歌舞伎俳優・二代目中村獅童さんだ。伝統を守りつつ革新を図っていく、その試みは「錦秋十月大歌舞伎」でも話題になった。山田洋次監督による歌舞伎座初演出で『文七元結物語』(ぶんしちもっといものがたり)が上演されたのだが、長兵衛役の獅童さんが相手役に推したのが、女優の寺島しのぶさんだったのだ。
「賛否両論、いろんな意見がありますよね。全く受けつけないという方と、こんなに面白いのかとおっしゃる方と。女性が歌舞伎座に出るのはどうなんだという意見もある。でも、長い歴史の中では女優さんが出演した例もたくさんあるし、そもそも歌舞伎って、出雲阿国が発祥なわけだから、女性が出演してもいいですよね」
静かな語り口ながら、熱い気持ちがひしひしと伝わってくる。
「今は完全に男女平等の社会ですよ。なのに歌舞伎だけが女性を拒否しているみたいなのって、やっぱりおかしいじゃないですか。もちろん花魁みたいな役は男性がやってこその歌舞伎のよさもあります。でも演目によってはいいんじゃないかと思うんですよね。受け継ぐべきはきっちり受け継ぎながら、いらないものは捨てていかないと、時代に置いていかれてしまいます」
その獅童さんが2016年から取り組んでいるのが「超歌舞伎」である。バーチャルシンガーの初音ミクさんと獅童さんが、最新の映像通信技術によって共演するという画期的な試み。観客はペンライトを振って声援を送り盛り上がる。
千葉・幕張メッセで始まった舞台は、7年目を迎えた昨年、新橋演舞場の他、博多座、御園座、南座と4都市で上演されるに至った。そして今年ついに、「十二月大歌舞伎」の演目のひとつとして『今昔饗宴千本桜』(はなくらべせんぼんざくら)が歌舞伎座で上演されることになったのだ。獅童さんと初音ミクさんの宙乗りもあるのだという。
「やはり歌舞伎の聖地だし、本当にありがたいと思います。ただ、ここでやれたから認められたというのは、違うと思っているんです。決めるのはお客さまですから。幕張から始まった舞台を8年間支えてくれたのは、紛れもなく、ミクさんファンの方たちです。初めは色眼鏡で見られていたものを、彼らがここまで連れてきてくれた。これまでやってきたことを、改めて批判も覚悟のうえでやるという腹のくくり方をしないと、おとなしく、中途半端なものになってしまう。のるかそるかの覚悟で臨むだけです」