敬老の日【親の認知症に気づいたら…】症状が進んだ認知症の本人は、何を思っている?
認知症の症状が進むと、本人はどんな気持ちになっていくのでしょう。できなくなってしまったつらさを感じながら、一方で、「ありがとう」という感謝の気持ちを持ち続ける人もいます。本人の気持ちに寄り添うにはどうしたらいいのか。川崎幸クリニック院長の杉山孝博さんにお話を伺いました。
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目次
症状が進んだ認知症の本人は、何を思う?
認知症の症状が進むにつれ、本人は「これまで通りのいろいろなことができなくなった」と感じることが増えていきます。
最初は、忘れないように書き留めておいたり、もの忘れが進まないようにがんばる人もいます。しかし努力しても、次第にさまざまなことができなくなってくるため、「何もできない」と悲観したり、「もっとしっかりしないと」と自らを奮い立たせたりするようになるのです。
周囲には迷惑をかけたくないと思っているものの、さまざまなことに失敗し、トラブルを起こすことも増え、どうしようもない状況に困惑するようになります。
周りの人に、どうして文句を言われるのか、なぜそんな言い方をされないといけないのか、否定されるのか、くやしさや悲しみ、怒りの感情が湧くようになります。
一方で、自分のことを大切にしてくれる人に、「幸せになってほしい」「ありがとう」という感謝の気持ちを持ち続けている人も多くいます。
認知症が進み、人とのかかわりが少なくなると、さみしさが募り、孤独感が高まるようにもなります。ひとりぼっちでいると、周りから見捨てられたのではないかと不安になり、家族を探しに外に出かける人もいます。
認知症でも、できることはある!
認知症の人の心のなかをもう少し見ていきましょう。
認知症が進行すると、できないことが増えて失敗することが多くなりますが、認知症になっても保たれている機能はあるのです。
人の世話になる一方ではなく、人の役に立ちたい、という前向きな気持ちを持っている人も多くいます。人の支えがあったり、環境が整っていれば、できることはたくさんあるのです。
家族はつい、できなくなったことばかりに目を向けて、手出しや口出しをしがちです。少し時間をかけたら本人ができるのに、ついやってあげたくなります。
しかし、親にとって、自分の役割を取り上げられることは耐えられないものです。何十年もかけて培ってきた経験や体で覚えたことは、長く保たれやすいともいわれます。
できるだけ親のやりたいようにしてもらい、完全にできなくなったり危険だったりする場合はサポートする、そんなスタンスをとるのはどうでしょう。
本人に寄り添うとは、どういうこと?
認知症の人にかかわるときは、本人に寄り添う姿勢が大切です。
「寄り添う」とは、よく耳にするキーワードですが、具体的にどうしたらいいのでしょう?
まず、認知症の本人の話を聞きましょう。昔の話なら、認知症の人は得意な人が多いでしょう。同じ話も嫌な顔をしないで何度でも聞きましょう。話しかけられやすい状況をつくりましょう。もちろん、こちらから話しかけてもいいでしょう。
そして、いっしょに過ごすことを心がけてください。同じ部屋にいても、ずっとスマホをいじっていては、いっしょに過ごした感じがありませんね。できるだけそばにいて、手を握るのもいいでしょう。親が施設にいるならできる範囲で面会に行きましょう。