【虎に翼】寅子(伊藤沙莉)の中に新たな視点が生まれる。そのセリフを憲法記念日に持ってくる構成の凄さ!
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田幸和歌子
それにしても、検察側が直言を有罪とする証拠は、直言の自白のみとは。自白の強要によって起きてしまった冤罪事件、自白の信憑性について再審を繰り返す事件は近年まで繰り返されていることは、ニュースなどでもよく知られた事実だ。当時から現代まで続いていることに、改めて愕然とする。
直言の自白は、厳しい取り調べに耐えかねてなされたもののため、調書にはさまざまな矛盾が生じている。穂高や寅子たちはその矛盾を、資料を集めながら一つずつ小さい穴を開け続け、やがてそれが厚い壁を貫くような作業を繰り返す。直言の無罪を勝ち取る大きな決め手となったのが、直言の妻・はる(石田ゆり子)がずっとつけてきた日記だったという夫婦愛、家族愛を感じさせるうまさ。はるの冷静さ、聡明さは寅子の中にしっかり受け継がれている。
おなじみの傍聴マニア篠山(田中要次)のリアクションや、証拠の矛盾や嘘の自白を飄々とした態度を保ちつつ突いてくる裁判官の桂場(松山ケンイチ)の言葉の切れ味……これまでの主なキャラクターが一丸となって直言の潔白を証明するさまは、まさに総力戦。
しかも、直言が冤罪を機に、寅子の中はまた新たな視点が生まれていた。これまで法律は武器とよねが言い、寅子は盾や毛布と言った。しかし、父の冤罪を通して、桂場にこんな見解を伝える。
「法律は道具のように使うものではなく、法律自体が守るものというか。例えるならば、綺麗なお水が湧き出ている場所、というか」「綺麗なお水に変な色を混ぜられたり、汚されたりしないように、守らなきゃいけない」
スリリングな法廷劇にも舌をまいたが、この展開、このセリフを憲法記念日に持ってくる構成の凄さ。しかも、世論の大半が不要あるいは慎重論になっている中、強硬に改憲を進めようとする動きが進行中の今、明確なメッセージを持った作品が放送される凄さ。脚本家やプロデューサー、演出家をはじめとした作り手たちの強い覚悟を感じる第5週だった。
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