多発性骨髄腫と闘う宮川花子「お笑いの先輩や仲間が私のダメなところを少しずつ変えてくれた」
このときに限らず、「どうしてそんなに前向きでいられるんですか」とよく聞かれます。
答えは、至ってシンプル。前を向くしかないから。明日を見つめて進むしかないからです。
でも、最初からこうだったわけじゃありません。私、もともとはマイナス思考の人間なんです。
2年ほど前までは、朝、目が覚めると「はあ、生きてた」「まだ生きてる」とため息をつくのが習慣でした。
そう言うと大助くんが嫌な顔をすることには気づいていましたけど、つい口からもれてしまうんです。それくらい「生きるってしんどいなあ」と毎日思っていました。
でも、ある日、大助くんが言ったんです。「マイナス思考はやめようや」って。「毎朝『生きてた』って言われる立場にもなってくれよ。僕も『よかったなあ』って言えるくらい人間ができてたらいいんやけど、つらそうにため息つかれたら、聞いてて悲しくなる」って。
ほんまにそのとおりやと思いました。それからは一切言わないようにしています。
もうひとつ、よくあるのは「花子さんは、お医者さんや看護師さんたちと、どうしてそんなにいい関係がつくれるんですか」という質問です。
患者さんやご家族の中には、お医者さんたちとうまくコミュニケーションをとれず、不信感をもつ人が多いみたいですね。
私はちょっと変わっているのかもしれませんが、病院の先生方に限らず、誰かに対して「嫌な人やなあ」と思ったことがないんです。
そもそも好き嫌いがありません。だから、誰とでも打ち解けられるんでしょう。
でも、これも昔からそうだったわけじゃありません。若い頃は、口も行儀も性格も悪かったですから。この世界に入っても師匠や先輩方に敬語が使えなくて、あの西川のりお・上方よしおさんも「のりやん、よっしゃん」なんて平気で呼んでいたくらいです。
大助くんがいちいち「年上に対して、そんな言い方はあかん」と叱ってくれて、人間関係のルールを基本から教えてくれました。
それにしても私は、今いくよ・くるよ師匠、ザ・ぼんちさん、明石家さんまさん、笑福亭鶴瓶さん......たくさんの方に本当によくしてもらいました。これまで出会ったやさしい先輩方や仲間が、私を少しずつ変えてくれたんだと思います。
闘病生活は、お医者さん、看護師さん、リハビリの先生、作業療法士さん、薬剤師さん、病室を掃除してくださる方など、たくさんの方たちの総力戦です。
私は、その神輿(みこし)に乗っているだけ。だから、できるだけいつも明るく笑顔で感謝を伝えるようにしています。
※この記事は『なにわ介護男子』(宮川大助・花子著/主婦の友社刊)の内容をWeb掲載のため再編集しています。
なにわ介護男子
宮川大助・花子著
主婦の友社刊
血液のがん・多発性骨髄腫に夫婦で立ち向かう宮川大助・花子の厳しい病状もつらい介護も笑いに変えてしまう心温まる闘病介護エッセイ。
宮川大助・花子を応援してきた方はもちろんのこと、ご自身が病気と闘っていらっしゃる方、介護をされている方にぜひご一読いただきたい、涙と笑いにあふれた内容です。
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