iDeCo放置で80万円見込み損!? 60歳からiDeCo始めた定年女子が愕然とした事実
本記事は、バブル期に入社した会社を60歳で定年退職した女性が、今までなおざりにしてきたお金の問題あれこれに直面し、右往左往しながら解決していく連載である。今回のテーマは年金からのiDeCo! FPの矢澤理恵先生にご教示いただく実践編です。
目次
▼前回はこちら▼
60歳からのiDeCo加入ってあり?ぶっちゃけ手遅れ?シニア女子の残念なリアル体験記iDeCo加入したとたん受給のお知らせ。受け取る? それともそのまま運用する?
——矢澤先生よろしくお願いいたします。前回の小沢美奈子先生から、バトンタッチとなりましたが、小沢先生がシニア女子の面倒くささに閉口されたわけでないと思います。ええ。きっとそのはずです。
矢澤「承知しました(笑)。ええとまず状況確認です。フグコさんは定年時に確定拠出年金をiDeCoに移換したんですね。
——ええ。周囲がiDeCoやってるって聞いて移換したのですが、iDeCoって60歳まで積み立てて、60歳以降に受け取る個人型の年金なので、60歳になってから移換するのはレアケースだと知ってびっくりです。
矢澤「それまで何も勉強はなさらなかったんですね」
——はい! 自慢じゃありませんがマネリテ低いシニア女子という肩書でこの連載をやらせていただいてますので。
矢澤「堂々とおっしゃいますね。でも資産運用は、自分で調べて、自分で決めることがとても大切です。これはちゃんと心に刻んでください」
——ええーそれが面倒なので先生に伺ってるんですよ。ちゃちゃっと儲かる運用教えてください。
矢澤「フグコさん、よく聞いて。フグコさんが定年まで長年働いて得た大切なお金の運用は、人の話だけで決めてはダメ。悪くしたら詐欺にひっかかる懸念もあります。これは次回きちんと説明しますね」
——は——い。ではまず、iDeCoのことを教えてください。実はiDeCoに加入した証券会社から「確定拠出年金受給資格取得のお知らせ」という封書が届きました。一時金、年金、併給で受け取れるそうなんですが、受け取ったほうがお得ですか?
矢澤「フグコさんは今、このお金が無いと生活は厳しいですか?」
——さほどでは。このようなライター仕事もありますし。でもここの原稿料は安……
矢澤「それはともかく、今必要なお金でないなら受給はしなくてもよいと思います。受給はいつからでも開始できるので、必要になった時点で申請を考えましょう」
——じゃあこのiDeCoは放置?
矢澤「放置はだめ! 口座管理手数料等がかかるので少しずつ減ってしまいます。運用しましょう。それにフグコさんは確か、若い頃に年金の未納期間が2年あり、今任意で年金を追加で納付してますよね。でしたら、62歳の納付完了期間まで、更に積み立てが可能なんです。今、手元に投入できるお金があるなら積み増すほうがお得です」
——お得! そのワードには弱いです。
60歳からも継続して積み立て可能! 限度額は月額6万8000円。さあどうする?
【ここで前回のiDeCoに関する情報のおさらいです】
●iDeCoは、60歳になっても、以下の条件のどちらかを満たせば積み足しが可能。
厚生年金(第2号)に加入されているか、国民年金の任意加入者として60歳以降も年金の納付を継続していること。
●加入期間は最長で65歳まで。ただし国民年金の任意加入期間が2年間なら、iDeCoの継続可能年も2年間。
●拠出金は、任意加入者で、国民年金の1号被保険者(会社員ではなく自営業などの人)なら5,000円から可能。上限は付加保険料や国民年金基金といった上乗せの制度と合算して月額6万8,000円まで。(2025年の税制改正で7万5,000円に引き上げられる予定)
——先生そもそもiDeCoってなぜおすすめなんですか?
矢澤「iDeCoの運用商品は投資信託の中でも毎日かかるランニングコストである信託報酬が安く、手堅い運用をしているものが多いのです。しかも掛け金は全額“所得控除”の対象、すなわち非課税、運用して得た利益も非課税。さらに受け取るお金も、年金として受け取れば“公的年金等控除の対象”、一時金として受け取れば“退職所得控除の対象”となる。ここが大きなメリットなので、なるべくiDeCoにお金を入れておくのがおすすめなのです」
——なるほどです。積み増すなら、定年退職金を原資にできますが、月々いくらくらい投入すればよいですか? 上限は6万8000円と伺いましたが。
矢澤「個人でお財布事情は異なりますので、生活に無理のない範囲で。預金額に余裕があるなら、ギリギリまで投入してもよいかもです。普通預金は、いわば銀行内で遊ばせているだけ。投資すればまだまだ育てられます」
——でも銀行預金は減りませんが、投資は元金保証されませんよね。すごく儲からなくていいのですが、資産が減るのは嫌です。投資なんてハードル高そうですが私にできるでしょうか。
矢澤「まず、初心者が手を出すのが難しい投資は避けましょう。その点、iDeCoはマネーリテラシーが低い人でも比較的安全に運用できる可能性が高いんです。意欲があるならシニアでも積極的にやってみませんか?
おいしい話ばかりのiDeCo。でもそんなうまい話ある? シニア女子は疑り深い。本当に儲かる? 裏はないの?
——なんかうまい話すぎません? iDeCoそんなに信用していいですか? 裏があるんじゃ?
矢澤「裏(笑)。iDeCoは日本政府が国民の資産運用を奨励するために生まれた制度なので、いかがわしいシステムではありません。もちろん投資なので利用する人によって利益は異なります。ちなみに本日現在での私の評価損益は6年間で55.6%です。
——評価損益って何ですか?
矢澤「iDeCoに投じた資産全体の運用利益をプラスで、損失をマイナスの数字で表すものです。55.6%ということは、ざっっくりいうと1.5倍に増えたということです」
——ひゃー!! そんなに増えるんですか?
矢澤「あくまでも想定額ですが、60歳から62歳まで24カ月間6万8000円投入すると、投入総額は、163万2000円です。その1.5倍は、244万8000円。2年で81万円がプラスになる可能性がある、ということですね。もちろん、ここからさらに長期で育てていきます。10年続けたら2倍になることだって夢物語ではありません」
——わーすごい! はっ! 先生ヤバいことに気が付きました!
矢澤「どうしました?」
——私、昨年7月に60歳になってから今日まで、すでに8カ月も放置してます! 54万4000円積み立てをしそびれてるので、すでに運用利益で27万2000円も損してます!
矢澤「それはもったいない。一刻も早く積み立てを始めましょう。このまま放置すると1年で40万円くらい増やしそこねる計算になります」
——ああもったいない(涙)。なぜ誰も教えてくれなかったのかしら。
矢澤「そこ! 他人に頼る発想が問題です。お金のことが苦手という女性は正直多いのですが、勉強はやるべきなんです。私は普段マネーに関するコンサルティングを行っているのですが、知識がなくて増やすチャンスを失っている方が本当に多い! 常々残念に思っています」
——おっしゃる通りです。でもじゃんじゃん投資することには不安があります。いざという時のお金は手元にもっておかないと。これから病気で高額な治療をすることも増えるでしょうから。
矢澤「もちろんiDeCoに全財産をすべてつぎ込むのはお勧めできません。iDeCoの受け取りには裁定手続きを含めに2、3カ月かかりますので、生活費の3カ月分を目安に普通預金でもっておきましょう。」
——素晴らしい。先生、この記事なんだかiDeCoの回し者みたいになってるんですが、ぶっちゃけリスクないとは思えません。ちゃんと教えてください。
iDeCoで損しないためのキーワードは分散投資! でも何にどれだけ分散させたらよい?
矢澤「銘柄一択で投資することはリスクが大きいです。ぐんぐん上がる銘柄は、どーんと落ちる可能性があります。特に海外銘柄は要注意。アメリカの経済政策がどんどん変わりつつある現在、世界的に予測不可能な状況になってます。一択だと全滅になることもありえるので、分散投資が基本のきです」
——分散させる銘柄の数は、具体的にはいくつくらいですか?
矢澤「決まった数はありませんが、初心者は、値動きの異なる4つか5つくらいを目安にしては。例えば、証券会社おすすめのセレクトプラン、海外株式、今注目の銘柄2つなどカテゴリーが違うファンドを組み合わせてはどうでしょう。ちなみに、積み立て額はすべて合わせて上限6万8000円です」
——銘柄を4つ選んだとして、どのくらいの配分に分けたらよいでしょう?
矢澤「私の場合は、利益率が高いものから、30%、20%×2,10%×1で、合計100%でしょうか。あくまでも一例です」
——とはいえ、じゃあどの銘柄がいいかなんて皆目見当がつきません。SNSで金融系インフルエンサーたちが「コレが買い!」なんて勧めているのを見ますが、誰を信用していいのやら。
矢澤「銘柄を知るきっかけとしては、SNSでいいと思います。肝心なのはその銘柄について自分で調べること。簡単な方法でわかるんです。投資銘柄の検索サイトというものがあります。ネットで検索するといくつか出てきますから、そこでおすすめの銘柄を調べてみましょう」
——検索サイトは「みんかぶ」とかいろいろありますね。ここで、こないだYouTubeで知ったAという銘柄を検索してみます。ああ、いろいろ情報が出てきますね。
矢澤「リターンという項目を、まずご確認。利回りが3カ月、1年、5年などの期間別で出てきます。この数字に絶対的な意味はないので、1銘柄だけではなく、いくつか比べてみましょう。サイトによっては銘柄の人気ランキングなどもあります」
——今人気のものから選ぶとよいですか?
矢澤「初心者は、今だけでなく過去の実績もチェックを。長期で安定して利回りがよく、振れ幅が少ないものがおすすめです。この項目はこれからも時折チェックしていきたいので、表を作って数字をメモしておくとよいですよ。私はExcelで詳細な表を作っています」
——わあーすごい表ですね! 投資信託のサイトなんて、私が見てもわからないと思ってました。実際にこうやって自分で数字を見ることが大事なんですね。
矢澤「ネットの情報や他人の口コミだけを信じないように。そして状況は常に変わるので、半年に1度くらいは銘柄をチェックしましょう。下がる傾向にあるなら、積み立て変えるのも手。掛け金の配分割合の変更と、スイッチング、すなわち預け替えという2つの変更システムを使います」
——いやもうここまでで、頭がいっぱいいっぱいです(笑)。
矢澤「サイトで簡単にできますが、今日はこのくらいにしましょうか。とにかくフグコさんは一刻も早く積み立てを始めてください」
——じゃあこれからって、あれそれには申し込みが必要なんかい! しかもフリーランスはネットではなく紙の申込み書の郵送一択……(涙)。すぐ送ってもらうようネットで申し込まなきゃ、あれパスワードがわからない。ああログインできない。あたふた。
矢澤「シニアのパスワード行方不明問題も次回にお話ししましょうか。とりあえずがんばってくださいね!」
ご協力いただいた 矢澤理惠先生
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)マイアドバイザー所属
株式会社オフィスヤザワ 代表
ファイナンシャル・プランナーを目指したきっかけは「知らないと損をする」ことを自分で実感したため。祖父母の相続時に発生した「争続」、何の対策もしておらず2度も払った多額の相続税。その時に「前もって知っている大切さ」に気づき、知っていると得をする、幸せになることが世の中にたくさんあるとお知らせするべく、車を大事にしている方向けの個人相談、コラム執筆、ライフプランニング&資産運用のセミナーを3本柱としてとして活動中。
※投資では、元本割れする可能性があるので、運用は十分に気をつけて行いましょう。この記事は特定の金融商品や運用方法の推奨、投資アドバイスなどを目的としたものではありません。ご自身の判断で行ってください。
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