「シングルで子どもがいない私」が、60歳目前で生まれ故郷・東京に戻ることにした理由 【広瀬裕子さんのターニングポイント#1】
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ゆうゆうtime編集部
50歳と55歳目前の心境を、それぞれ著書に綴ってきたエッセイストの広瀬裕子さん。その広瀬さんが60歳を前にして、新刊『60歳からあたらしい私』を発売しました。4月に誕生日を迎え、いよいよスタートを切った60代。「あたらしい私」につながるターニングポイントをうかがいました。
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PROFILE
ひろせゆうこ●1965年東京都生まれ。エッセイスト、設計事務所共同代表。葉山、鎌倉、瀬戸内での暮らしを経て、2023年より再び東京へ。瀬戸内時代の1/3の広さの都心の賃貸マンションに愛猫「あめ」と暮らす。最新刊は『60歳からあたらしい私』(扶桑社)。『50歳からはじまる、あたらしい暮らし』『55歳、大人のまんなか』(PHP研究所)ほか、著書多数。
生まれ育った場所へ戻って、60代のためのスタートラインを引き直したい
―広瀬さんは2年前まで瀬戸内の町にお住まいだったのですよね。東京暮らしはおよそ20年ぶりとのことですが、戻ってくることにしたのはどうしてですか?
きっかけとなったのは、コロナ禍で東京の施設に入っていた父親との面会がままならず、父のそばにいたいと思ったからでした。ただ、準備をしているときに父が亡くなり、東京へ戻る理由が消えてしまったんです。でも、「東京へ帰ろう」という思いはなくならず、生まれ育った場所に戻って60代のためのスタートラインを引き直したいと思いました。
―「60代は東京で」と考えたのですね。
シングルで子どものいない私は、これから行政の保健や福祉のサービスにお世話になることが多くなると思うんです。詳しく調べたわけではありませんが、サービス内容の面でも、関わってくださるかたたちとの意思疎通の面でも、東京のほうが自分に合っているのではないかと考えました。
―60歳前後というと、田舎暮らしにシフトするかたもいますよね。
ずっと東京に暮らしていたら、私も地方移住に憧れたかもしれません。これまでずっと自然の豊かな場所で暮らしてきたので、しばらくは都会でと思っています。東京でも緑の多い場所はあるので、自然が恋しくなったらそちらに目を向けようかなと。
―3年目に入った東京生活はいかがですか?
東京、すてき(笑)。家賃と物価が高いところ、混み合っているところが東京のデメリットだと思いますが、それ以外のことに関しては、ほぼノーストレスで過ごせています。
たぶん、みなさん一生懸命で、「自分に集中している」のが心地よく感じられるんだと思います。あと、東京の再開が急速で(笑)、それも面白いですね。廃止した高速道路を緑化して歩行者道路*に再生させるプロジェクトや、高速道路を地中下に移し日本橋を青空のもとに復活させるプロジェクト**など、東京に集中するエネルギーを感じつつ注目しています。
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詳細はコチラ新しい楽しみを見つけながら、東京暮らしを満喫しています
―東京での暮らしで、新しくはじめたことも多いそうですね。
著書でも触れていますが、地元の盆踊りの練習会に参加して、夏に踊るというのを続けています。この夏の予定はすでに盆踊り大会でいっぱい。それから、茶道も再開しました。歌舞伎を観に行くことや、落語を聞きに行く楽しみも新しく加わりました。私、知らなかったのですが、寄席って元日からやっているんです。そういうところが東京だなと。
―車を手放して「歩く暮らし」もはじまりましたよね。アップルウォッチの歩数が以前の2倍や3倍になったと。
外出先から戻るときに、勘を頼りに自宅をめざして歩くこともあります。惹かれる路地があると入っていくので道に迷うこともあるのですが(笑)、東京はタクシーがすぐにつかまるし、バスも頻繁に走っているので、臆することなく歩いています。
車を手放したときはさみしさが伴いましたが、改めて東京の交通網に驚き、便利さを享受しています。ひとり暮らしで子どもがいないと、年齢を重ねた先の移動手段についての課題が発生してしまいますが、公共交通が「ある」というだけで未来に希望が持てます。
―パンは浅草、野菜は築地……という広瀬さんの「買い物地図」も広がりそうですね。
引っ越しが多かったこともあって、自分にとって必要な場所、それはおもに「食」のお店なのですが、それらを地図にマークしています。マークの数が少なめなのは、私の食事が「いつもの」ばかりだから。次々と新しいお店を開拓するというよりは、気に入ったお店に繰り返し通うことが多いですね。お店の人と少し会話ができるくらいになれたらと思っています。私、プロのかたのお話を聞くのが好きなんですよ。
―広瀬さんがインスタグラムに投稿されているお茶菓子が、いつもおいしそうです。
お菓子をおいしくいただくために、健康でいようと思っていて(笑)。甘いものは銀座や日本橋で求めることが多いですが、まだまだ知らないお店がたくさんあるので、周囲のかたから教えてもらうのも楽しみです。昔からあるお店の大切さも実感していて、年齢的なものなのか、そんなお店の「安定のおいしさ」を好むようにもなってきました。
―東京での暮らし、楽しんでいらっしゃいますね。
驚いたのが、生まれ育った東京に戻ったことで、短大や中高一貫校でのクラスメイトに思いがけず再会することが続いたんです。今はそのクラスメイトたちと会うことも楽しいですね。クラスメイトって自分では選べないぶん、ふだん親しくしている人たちとはタイプが違って、それがよかったりするんです。
クラスメイトだから年齢はみんな同じ。両親を介護している人もいれば、まだ成人前のお子さんの世話に忙しい人もいて、種類は違ってもみんなそれぞれ大変なことを抱えていて……。10代で出会った私たちがともに60代を迎えて、「がんばってきたね」と言い合えることがうれしいですね。
▼次回は東京でのお住まいについてうかがいます▼
広瀬さんのターニングポイント①
「60代への準備のために、瀬戸内から生まれ育った東京へ移住。20年ぶりの東京生活では、盆踊り、歌舞伎、落語といった新しい楽しみができ、ノーストレスで過ごせています」
撮影/加藤新作 取材・文/志賀朝子
*都心の高速道路「KK線」が歩行者空間に生まれ変わる!(https://www.kodomokoho.metro.tokyo.lg.jp/article/202502-2/)
**新しいまちづくりとともに首都高日本橋区間地下化(https://www.shutoko.jp/ss/nihonbashi-tikaka/)

60歳からあたらしい私
広瀬裕子(著)
扶桑社(刊)
60歳はあたらしいスタートラインととらえ、小さな暮らし、グレイヘア、家族の看取りなどをていねいに綴ったエッセイ集。夕食の食べ方を変えたり、布団生活をはじめたりと、今の年齢と住まいに合わせた試行錯誤の数々にも共感を覚える読者が多数。
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