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【あんぱん】「うちは、何ものにもなれんかった」が刺さる。そんなのぶ(今田美桜)の前に、初期のアンパンマンの姿が!

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田幸和歌子

苛立ちがつのり、嫌味混じりに目の前の仕事に流されるうちに描きたい漫画も描けなくなってしまうんじゃないかと言うのぶに、
「漫画はもういいんだ。どうせ売れないし、どうせぼくは代表作のない漫画家だよ」
どうせどうせと、たっすいがぶりを爆発させる嵩についにキレてしまい、蘭子の家にプチ家出してしまう。

東京でののぶが、嵩をめぐる嫁姑の立場でのぶつかり合いや分かり合えない壁を軸にしつつも、結局一番腹を割った話をしている存在だと思うのが、嵩の母・登美子(松嶋菜々子)だ。喫茶店で登美子とのぶ、そしてのぶの母・羽多子(江口のりこ)が一緒になり、家出をしたこと、嵩とのこと、そして会社をクビになった自分に意見する資格はないのではないか、そんなのぶに対して、登美子はきっぱり言った。
「そんなこと負い目に感じずに、嵩と本音でガンガンやりあいなさい」

それがのぶにしかできないことだと。そこに、羽多子が重ねた、
「それはちっくと嵩さんが気の毒ですき。うちの娘は〝はちきん〟ですき」
と笑い混じりの言葉。そのバランスは絶妙だ。

【あんぱん】「うちは、何ものにもなれんかった」が刺さる。そんなのぶ(今田美桜)の前に、初期のアンパンマンの姿が!(画像4)

「あんぱん」第102回より(C)NHK

初期のアンパンマンの姿がそこに

そしてのぶは、今度は〝プチ自分探しの旅〟のように山にのぼり、自分のアイデンティティに向き合う。何かを吹っ切ったような思いで嵩のもとに戻ると、そこには机に向い漫画を描く嵩の姿があった。
「うちは、何ものにもなれんかった」
嵩の子どもも産めていない。ようやく素直な思いを口にできたのぶに、
「僕たち夫婦はこれでいいんだよ」
と、これまた実に嵩らしい言葉で返す。

何のために生まれたがかと、ずっと考えると言うのぶ。この作品の序盤から問いかけられ、言うまでもなくアニメ『それいけ!アンパンマン』の歌詞としてもよく知られる、人間の本質のようなものに迫る言葉がここで再び飛び出した。

嵩もまた、のぶの正直な吐露や家出なども含め、嵩なりに自分と向き合い何かを振り切ったのだろう。清々しい笑顔でのぶにとってまさに〝元気百倍〟となりそうな言葉を投げかけた。

「のぶちゃんはずっと誰かのために走ってた。いつもいつも全速力で。のぶちゃんがいなかったら今のぼくはいないよ。のぶちゃんはそのままで最高だよ!」
お互いの存在、その大切さを確認し合えたふたり。

そして、嵩の机の上の紙に描かれたキャラクター。
「たまるかー、この太ったおんちゃん、最高やね!」
初期のアンパンマンの姿がそこにあった。

【あんぱん】「うちは、何ものにもなれんかった」が刺さる。そんなのぶ(今田美桜)の前に、初期のアンパンマンの姿が!(画像5)

「あんぱん」第102回より(C)NHK

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