【79歳・中尾ミエさん】驚きのアパート経営！大家と店子の特別なバーベキューをのぞき見

「寿退居」の記念にみんなでバーベキュー

　実は私、自宅隣でアパートを経営しています。「大家さん」という、もうひとつの顔があるんです。建てたのは2006年だから、もう20年近く前のこと。２階建て計４室のアパートには「OHANA（オハナ）」という名前をつけました。ハワイの言葉で「家族」という意味です。ここにはもともとタップダンス教室があって、私も習いに行っていたんです。でも、普通の民家だったから床が抜けちゃって……。修繕してまで教室を続けるのも難しそうだったので、私がアパートを建てることになりました。
　アパートが出来上がる前から、タップ教室に通っていた若い子が「僕、そのアパートに入りますから」。あっという間に４室が埋まりました。しかも「更新料をナシにして」「大型バイクを買ったから駐輪場に屋根をつけて」「地面が砂利だと困る」なんて言いたい放題。まあ、わがままなのよ。仕方がないから屋根はつけることにしたけれど、砂利については「自分たちでやれ」と言いました。
　いつしか私を介さずにみんなで交流するように。住人同士のグループラインがあって、連絡網もしっかり整っています。先日は住人のひとりが結婚を機に寿退居することになり、みんなで「お別れバーベキュー」をしました。会場はわが家の庭。当日はあいにくの雨で、軒先に10人以上がぎゅうぎゅう詰めになりながら、みんなで調理しました。

パンもハンバーグも手作りで盛り上がるバーベキュー

パン作りの上手な人がパンを焼いてくれて、肉屋さんで働いている人がお肉を用意してくれて。みんなでこねてハンバーグを作って、焼いて、わいわい準備するのも楽しい時間。そして完成したのがハンバーガーとホットドッグです。レタスや玉ねぎ、ピクルスなど、トッピングもいろいろ。皆さんがイメージするバーベキューとはちょっと違うかもしれないけれど、これはこれでとってもおいしい！　何よりコミュニティのみんなで力を合わせてやった、特別なバーベキューでした。

若い世代との交流がいい刺激にも

　アパートの店子さんたちがいてくれるおかげで、日常生活に不安や困り事がほとんどありません。みんなわが家の中のことまでわかってくれているから、何かあったときは声をかければ助けてもらえるという安心感があります。
　たとえば、私やパートナーの具合が悪くなったら、電話すれば誰かが駆けつけてくれる。コロナ禍であまり家から出られなかったときは、きれい好きな子がうちの物置きを片づけてくれました。力仕事や庭の作業など、私ひとりだけではできないことも、お願いすれば手伝ってくれます。掃除が好き、DIYが得意、みんなそれぞれ一芸があって何かと頼りになります。
　逆にみんなも住人同士のつながりがあるおかげで、ひとり暮らしでも寂しくないみたい。アパートに帰ってきて、どこかの部屋に明かりがついているとホッとするようです。俳優をしている子が映画や舞台などに出演すると、他の住人たちが観に行ってあげたり。長く住んでいる子が多いから、信頼関係も強いと思います。

一番長く住んでいた子は3年ほど前に故郷の山口に帰ってしまいましたが、今でも月に一度は上京してわが家でご飯を作ってくれるし、連休などに山口まで彼を訪ねていく子もいます。アパートを出てからも交流が続き、みんながつながっている。私にとってもすごく嬉しいことです。
　若い世代の人との交流はとてもいい刺激になります。もし新しい出会いを求めているなら、若い人たちのコミュニティがあるところに出向いてみてはどうですか？　もちろん気が合う人もいれば合わない人もいるでしょうが、まずは受け入れようという気持ちで飛び込んでみないと。行動あるのみ、です。

PROFILE
なかお・みえ●1946年、福岡県生まれ。62年「可愛いベイビー」でデビュー。歌手だけでなく俳優としても映画や舞台などに多数出演し、バラエティ番組でも幅広く活躍。著書に『60代から女は好き勝手くらいがちょうどいい』（和田秀樹さんとの共著／宝島社）など。

取材・文／本木頼子

※この記事は「ゆうゆう」2025年10月号（主婦の友社）の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。

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