51歳で若年性アルツハイマーと診断【YAYOIさん・55歳】が歌で見つけた生きる楽しみとは?
できないことがあっても認めてもらえるんだ
現在、夫は牧師の勉強のために東京で暮らしており、YAYOIさんは一番下の息子さんと北海道でふたり暮らしだという。家事の分担などは特に決めていないが、今のところ暮らしは問題なく回っている。
「私の場合、一番の課題は時間管理なので、とにかく何ごとにも余裕をもって動くようにしています。忘れちゃいけないことは、ふせんに書いて貼っておく。忘れることを前提に行動しています」
夫は東京へ行く前に、ライブスケジュールなどを調整して支援者の方に伝えておいてくれたという。それを受けた心強い勝手連サポーターたちが、しっかりYAYOIさんのスケジュールを管理している。
認知症になって多くの人に支えられる日々を過ごすうち、YAYOIさんは考え方が変わったという。
「私はずっと、『頑張らなくちゃ』と思って生きてきました。何でも自分でできなきゃいけない、自分がしっかりしなきゃいけないと思っていました」
その思い込みはときに重荷となり、気持ちが追い詰められることもあったという。けれど病気になってから、誰かに助けを求めることに罪悪感を抱かなくなった。
「助けてもらわなければできないこと、困ることがたくさんあるから。支えてくれる方に申し訳ないと思ったこともあるけれど、皆さん喜んでいろいろやってくださる。ああ、いいんだ。できないことがあっても認めてもらえるんだって思えるようになりました」
認知症という厳しい現実を受け入れながら、YAYOIさんは周囲を信頼し、周囲から認められるという幸せな関係を紡いでいる。
今、私にできるのは歌うこと。いつか大貫妙子さんとコラボするのが夢です
幼い頃から歌うことが大好きだったYAYOIさん。長い間、歌は仕事ではなく暮らしの楽しみだったが、認知症の診断を受けてから本格的にライブ活動を始めた。SNSなどでの告知を忘れるとお客さんの数に影響するから、忘れないようにしないとねとほほ笑む。実はYAYOIさん、ひそかにあたためている夢があるという。
「学生時代、落ち込んでいるときに救いになったのが大貫妙子さんの歌。いつか大貫さんと一緒に歌うのが、私の夢なんです」。去っていった恋人が街に戻った情景を歌った『突然の贈りもの』が特にお気に入り。「あれは完結していない物語のように思います。これからどうなるのか想像しながら、しみじみと歌わせていただいています」
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撮影/守澤佳崇 撮影協力/三岸好太郎美術館
※この記事は「ゆうゆう」2025年10月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。
